歴史で解き明かす中国とロシアの「正体」


岡本隆司 (おかもと・たかし)  京都府立大学文学部准教授

1965年京都市生まれ。中国近現代史研究者。サントリー学芸賞を受賞した『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会)のほか、近著に『中国「反日」の源流』(講談社選書メチエ)などがある。

チャイナ・ウォッチャーの視点

めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。(画像:Thinkstock)

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今年の2月、ウクライナのヤヌコーヴィッチ政権が倒れて以降、西方の国際政治はロシアの動向を基軸として、大きな転換のさなかにある。

 東隣のロシアは、ウクライナ国内の親ロシア勢力を支援して、クリミアを編入したうえ、東部の諸州でも内乱状態を助長してきた。なお戦闘はやまず、予断はゆるさない。

 もちろんロシアとウクライナの二国間だけですむ問題ではない。欧米がこうしたロシアの姿勢に反撥、その行動を強く非難したからである。アメリカと同盟関係にある日本も、利害は必ずしも欧米諸国と一致しないながらも、それに同調せざるをえなかった。

 しかしロシアは決して孤立していない。その動きに明確な支持を打ち出した国があるからである。その代表が中国であること、もはやいうまでもあるまい。

中露は「呉越同舟」なのか

 去る5月21日閉幕した、中国上海でのアジア信頼醸成措置会議、いわゆるCICAの首脳会議を主宰した習近平国家主席の言動は、その意味でもすこぶる注目に値しよう。この会議で習主席は、「アジアの安全はアジアの人民が守らなければならない」と述べ、日米など西側先進国抜きのアジア安全保障の枠組を打ち出して、多くの耳目をそばだたせた。中国による東アジア制覇の宣言ととらえる向きもある。

 それはもとより、孤独な虚勢ではない。ロシアやイランなど、欧米から制裁を受けて反撥を強める国々の同調を得たうえでの宣言である。中国が同じくアメリカと対立するロシアと提携した局面は、日本にとっても外交・安全保障の重大な転換をもたらしかねない。

 そんな局面にあたり、中露は共通の敵があることで当面、良好な関係を保っているものの、早晩いずれは対立、決裂に転じるだろうとの観測が少なくない。新聞報道でも「そう簡単には一枚岩になれない」、ロシアが「中国に従うほど甘くはない」という(5月22日付産経新聞)。

 文字どおりには、確かにそのとおりかもしれない。こうした「呉越同舟」論は、中国・ロシアの専門家にも根強く、わが中国史でいえば、ロシアをたとえば匈奴など、いにしえの北方遊牧国家になぞらえ、本質的にあいいれない南北対立を連想しがちである。

 しかしそれは容易に信じられない。隣国どうしである以上、対立する案件・条件に事欠かないのはあたりまえ、それでも決定的な決裂にいたらない要素を、両国は共有しているように思われる。

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岡本隆司(おかもと・たかし)

京都府立大学文学部准教授

1965年京都市生まれ。中国近現代史研究者。サントリー学芸賞を受賞した『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会)のほか、近著に『中国「反日」の源流』(講談社選書メチエ)などがある。

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