ベテラン経済記者の眼

2014年7月30日

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 ベネッセHDの顧客情報の大量流出事件には驚かされた。正直、企業からの個人情報の流出は珍しくなく、ある意味で報道する側も「慣れっこ」になっていた面は否定できない。実際のところこれまで、小さいものを含めればかなりの数の流出事案があり、メディア側では件数と悪質性に応じてニュースバリューを判断してきたが、それが数百、数千件の流出レベルなら、新聞やテレビなどでのニュースの扱いは、結果としてごく小さいものにとどまっていた。

 しかし、今回のベネッセのデータ流出は規模が破格に大きく、刑事事件になって、流出に関わった容疑者が逮捕・送検されているという点でも非常に悪質だ。長年経済報道に関わってきたが、これほどまでの情報流出事案に筆者も遭遇したことがない。

 日本は食品の安全などモノの品質については非常に繊細に反応する国民性があるのだが、こと、情報の扱いについては、世間に名の通った大企業であってもこれまでずさんな対応がまま見られたのは非常に気になっていたところだ。

企業の責任、世の中の不安心理を報道

 今回の問題を、第一報から多くの新聞・テレビが大きく扱ったのは当然な判断だったと思う。筆者としては、事件の展開とともに、その後の解説がどうなるかを注目していたが、日本経済新聞の7月26日の夕刊では「ベネッセ 情報管理に『穴』 容疑者の最新スマホ防げず」と報じた。また読売は、25日の3面で「ベネッセ流出 情報管理企業に難題 『常に監視』仕組み必要」と複数の大企業の取り組みを紹介しながら、情報管理の難しさを指摘した。

 一連の報道で各紙の解説に共通していたのは、情報を流出させたベネッセの企業としての責任だ。朝日新聞は7月23日の朝刊で流出被害がどこまで広がるかわからない不安を「さらに増えるおそれ」「顧客、一気に不安拡大」と報じた。ひとたび顧客情報の流出が起こると、影響がどこまで広がるかわからない「底なし沼」になりかねない世の中の不安心理をすくいあげた。

 今回の事件が注目を集めているのは、被害の大きさもさることながら、内部関係者が悪意を持ってその気になれば、際限なく情報を流出できてしまうという恐ろしさだ。しかもその情報を売買する「闇市場」ができあがっており、同業に近い他社が金で買って、平然と利用している気持ち悪さは多くの人に共通する感情だろう。

 売買する市場ができていて、顔を合わせず金銭でやりとりでき、入手先を確認しないまま商売で使うというあやうさも見逃せない。

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