2024年4月30日(火)

Wedge REPORT

2014年9月11日

10兆ドルの経済価値

広州市の巨大卸売店街(写真2)
(SAYAKA OGAWA)

 アフリカ諸国で出回っている模造品の多くは、知的財産権保護の観点から問題視される高模造品ではなく、いっけんして偽物だとわかる低模造品である。

 中国の広州市には「チョコレート城」と呼ばれる巨大な卸売店街がある(写真2)。ここにはアフリカ各国から膨大な数の商人が衣類から家電製品、携帯電話、おもちゃに至るまで、多様な商品を買い付けに集まってくる(写真3)。税金を払わず、法や規制の網の目をかいくぐって営業する彼らは、正式な雇用統計に載らない、いわゆるインフォーマルセクター(非公式部門)である。

沢山の商品を買い付けたアフリカ人がよく見られる (写真3)(SAYAKA OGAWA)

 これらの商人の経営規模は零細だが、全体的な規模は驚くべきものだ。

 『「見えない」巨大経済圏』(東洋経済新報社)の著者であるロバート・ニューワース氏によれば、インフォーマル経済は世界中で18億人もの人間に雇用を提供し、その経済価値は10兆ドルにも上る。近年では、このトランスナショナルなインフォーマル交易の急速な発展を「下からのグローバル化」などと呼び、それと多国籍企業や先進諸国が主導する「上からのグローバル化」との違いや、関係を分析する研究も増加している。かつて「偽装失業層」の巣窟とされたインフォーマル経済の新展開は、中国の経済成長だけでなく、世界各地のインフォーマル経済の住人たちの不確実な環境を生き抜くための知恵や戦略、思想が共鳴しあうことで生じているものだ。

 私が長年調査してきたタンザニアの零細商人たち─中国語はおろか英語すらおぼつかない若者たち─のあいだでも、チャイニーズ・ドリームに挑戦するために、数十万円から数百万の資本をかき集めて中国に飛び立っていく者が後を絶たない。


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