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2014年12月29日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、東京証券部、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務める。11年からフリーに。熊本学園大学招聘教授。近著に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)。

秋田県能代市の一軒の酒屋に、店主の話を聞くために全国から客が訪れる。そんな店主が惚れ込むのが、「NEXT FIVE」と呼ばれる5つの蔵元。日本酒を通じて売り手と造り手が協力し、秋田ファンを増やしている

 秋田県能代市に1軒の酒販売店がある。「天洋酒店」。かつての街道筋に面しているとはいえ、繁華街から離れ、駅からも歩けば10分はかかる。それにもかかわらず、全国から日本酒好きがわざわざ訪ねてやって来る。知る人ぞ知る店なのだ。

天洋酒店の外観

 能代大火の後に建てられたという昭和レトロな店の中は、世の酒屋とはまったく趣きが違っている。何せ酒屋に必須のビールやウイスキーといった定番商品が一切置かれていないのだ。あるのは日本酒だけ。それも秋田の地酒。しかも、店主の浅野貞博さんが惚れ込んだ蔵元の酒だけしか並べない。どんなに人気がある売れ筋商品だろうが、一切置かない。

 浅野さんは、客がやってくると、おもむろに冷蔵ケースから酒瓶を取り出し、試飲を勧める。4号瓶や1升瓶がずらりと並んだ大型の冷蔵ケースの前の土間に、小さなテーブルを出し、丸椅子に客を座らせて、それぞれの酒の特長や、醸造の仕方、原料などの説明をする。

 話は蔵元の人柄や酒造りに対する意気込みにまで及ぶ。そんな熱のこもった浅野さんの語り口に、客はいつの間にか引き込まれていく。店を出る頃にはすっかり、秋田の酒のファンになっている。

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