2024年4月27日(土)

ペコペコ・サラリーマン哲学

2009年9月28日

 これを小田切さんは、社長の10年の間に、じっくり時間をかけて、人事の権限を5にしてしまいました。なぜそんなことができたかは、出身母体である経理・財務の権限を5にして人事をとも連れにしたからです。人事、経理・財務あわせて70あった権限を10にしました。その上で、事業部門のそれぞれ10の権限を、販売30、製造30、研究30にしました。これがすべての発展のもとになりました。

 小田切さんが社長になった1974年のとき、私は経理・財務課長でした。そのときの権限と、16年後の1990年に経理・財務担当取締役になったときの権限がほとんど変わりませんでした。ご自分の出身母体である経理・財務部門の権限を30(1974年)から5(1983年)にしてしまった小田切さんは、本当に悪い(わるい)人 <悪(あく)ではなく> です。失礼な言い方を許してもらえば、ワル(悪)であられたと思います。いまも、信越化学の「中興の祖」として尊敬・敬愛される「人間・小田切新太郎」氏を想うと、ひとりでに涙があふれ出てきます。

 会社の本質は経理・財務にはぜったいにありません。人事にもありません。

経理・財務の「最後の砦」

 経理・財務の一番の仕事は何か。小田切さんに教えられたことは、「経理・財務が絶対に手放してはならない、「経理・財務」固有の権限(最後の砦)は、財産をないがしろにする人間、部門を許さないこと」です。

 「しかしそんな権限は会社にある仕事全体の1万分の1くらいしかない。でもその1を放棄したら経理・財務はいらない。金児君は、経理・財務として財産をないがしろにする人間や部門を許してはならない。私が会社財産を危うくする行動をとったら、社長である私も許してはならない」小田切社長はそうおっしゃいました。

 社長が財産をないがしろにする行動を起こしたら、社長であっても遠慮なく叩き切れ というのです。私は一言で申して、経理・財務はふだんはなにもしないことが大事だと想います。その一例が、元本が確実でない財テクは絶対にやらないことです。

 

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