FinTech伝統的な金融業界を破壊


渡邊竜士 (わたなべ りゅうし)  トムソン・ロイター・マーケッツ株式会社 執行役員

トムソン・ロイター・マーケッツ株式会社 執行役員。1972年東京生まれ、米国育ち。 慶應義塾大学 総合政策学部卒業、野村證券株式会社入社。国内外の機関投資家向け営業を経て、マネージング・ディレクター就任。セールストレーディングやヘッジファンド向けビジネスの責任者に。香港でアジア戦略に携わった後、2014年1月退社。2014年6月トムソン・ロイター入社。

金融万事 塞翁が馬

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1800年代前半のヨーロッパ、ロイターは、証券取引所の株価やニュースを伝書鳩で近隣市町村へ届けていたそうだ。数十年して時代は伝書鳩から電信へと進化。ドーバー海峡に海底ケーブルが敷かれたのは1851年で、その後欧州からの電信ケーブル敷設と合わせて長崎、神戸、横浜支局を1872年に開設している。

iStockより

脅威的進化遂げた金融IT技術

 情報伝達の速度はここ200年で驚異的な進化を遂げている。伝書鳩の飛行速度は50キロ/h位、電信になってからは速度と共に量(ケーブルの太さ、材質、送受信能力)も向上、近年では光ケーブルの中を秒速約20万キロ(7億2000万キロ/h)で情報が伝わっている。金融機関から証券取引所への電子取引(注文)はもはやミリセカンド( 1000分の1秒)単位でその速度が評価されるようになった。

 金融IT技術の革新は他にも沢山ある。世界で初めてバークレイズ銀行がATMを設置したのは1967年。蛇足ながら、設置当初の主な利用者は “窓口で頻繁に顔を見せたくない” ギャンブラーや娼婦だったそうだ。1980年代には欧米でオンライン・バンキングが広まり、1990年代に入ってインターネット経由のEバンキングへと進化している。

 随分と前置きが長くなってしまったが、これだけ金融IT技術の革新には長い歴史があるのに、何故今になって突然 FinTech (Financial x IT Technology)と皆浮き足立っているのだろう?

“FinTech” がここ数年大きな話題に

 世界経済フォーラム(通称ダボス会議)では Disruptive Innovation in Financial Services(直訳:金融サービスにおける破壊的イノベーション)と何とも物騒な名前の分科会が設置され、今年6月には “The Future of Financial Services(直訳:金融サービスの未来)” という報告書を発表している。

 金融庁は『平成27事務年度 金融行政方針』(2015年9月)でFinTechを「(省略)金融業や市場の姿を大きく変えていく可能性が高まっている。」とし、具体的重点施策に。また、経済産業省はFinTech研究会を発足(2015年10月)し、年内に計5回の会合を予定。金融、IT、そして業界団体はセミナーや勉強会を連日連夜開催している。

 元バークレイズCEOのアントニー・ジェンキンズ氏は先週、「向こう10年で金融サービスセクターで雇用されている人員や支店の数は半減するかもしれない。影響が小さなシナリオでも最低限2割の削減になるだろう」と、伝統的金融機関への破壊の部分を表現した(ロイター記事)。

 実は、現在話題になっている類のFinTechサービスは10年程前から海外で始まり、その裾野が足元で急拡大しているものが多い。過去の金融IT革命と大きく異なるのは、一般市民(最終消費者)にごく近いところにこの変化があり、伝統的な金融機関とそのサービスを脅かし、新しい枠組みが生まれている事だろう。

 あまり抽象的な話が続いても回りくどいだけなので、具体的なFinTech金融サービスについて紹介したい。

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「金融万事 塞翁が馬」

著者

渡邊竜士(わたなべ りゅうし)

トムソン・ロイター・マーケッツ株式会社 執行役員

トムソン・ロイター・マーケッツ株式会社 執行役員。1972年東京生まれ、米国育ち。 慶應義塾大学 総合政策学部卒業、野村證券株式会社入社。国内外の機関投資家向け営業を経て、マネージング・ディレクター就任。セールストレーディングやヘッジファンド向けビジネスの責任者に。香港でアジア戦略に携わった後、2014年1月退社。2014年6月トムソン・ロイター入社。

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