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2016年8月24日

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マリシア・ノワク、BBCニュース

インスタント麺とマヨネーズと粉末ジュース。この組み合わせで素晴らしいグルメの食事ができるとは想像しにくいが、もしあなたが刑務所暮らしだったら、その日一番のごちそうになるかもしれない。

1日に支給される食べ物が、トレーに載ったささやかな朝食と昼食と夕食のみで、それも1人の服役囚が言うように「限りなくまずく食べにくく作られた」ものだったとしたら、何らかの創意工夫が必要になってくる。

1990年代と2010年代に1度ずつ服役したグスタボ・「グース」・アルバレズさんは、「90年代初めに出てくる食事はまともだった。いい素材を使ってた」と話す。しかしその時代から2010年代に至るまでの間に、州の予算は減らされ、刑務所の運営経費は高騰し、多くの自治体が刑務所運営を民間に託すようになった。真っ先に経費削減の矢面に立たされたのが、食事だった。

「率直に言えば、気持ちが悪くなるほど最悪だ」とアルバレズさんは今の刑務所の食事を非難する。

そこで刑務所クッキングの登場だ。服役囚たちは手に入る食材をなんでも使って、自分で料理するわけだ。よく使われるのがインスタント・ラーメン。ビニール袋やボウルに、即席めんと調味料のほか、手当たり次第の具材を入れて混ぜ合わせる。

「刑務所ラーメン――檻の向こうのレシピやエピソード」という本を共著したアルバレズさんは、刑務所のラーメン人気について「安くて手軽だから」と話す。「思いつくままに何を足してもおいしくできるので」。

牢の中で調理するのは合法だが、ある程度の工夫が必要となる。

電子レンジがある場所は限られているが、即席麺をもどすにはボウルと熱いお湯があれば大丈夫だ。温かいお湯でもなんとかなる。

「ボウルに麺を入れて、お湯を足して、ふたをする。それを自分の部屋に持っていって、布団や枕で覆って熱が漏れないようにする。これはだいたいけっこう効果的で、10分もすればラーメンが茹で上がっている」。とある元服役囚はWikiHowにこう書いている。

ボウルはたいてい刑務所の食堂で手に入るが、代わりにゴミ用のビニール袋を使って食材をひたすこともできる。トイレットペーパーを使った調理法もある。

刑務所に託した所持金があれば、ツナ缶やパン、米、チーズ味のスナックなどが食堂で買える。

支給の朝食や昼食から食材をとっておく人もいる。たとえばゆで卵やロールパン、マヨネーズやピクルスなどだ。

アルバレズさんによると、めぼしい素材の調達には多少の規則違反が必要になる。たとえば、おいしくない食事をプラスチックバッグに入れて食堂から出て、肉のかけらを取り出すなど。

「ビーフストロガノフの中身を取り出して、洗って、ラーメンに混ぜて、別の料理を作りだすんだ」

万が一見つかった時、理解のある看守なら、貯めこんだ食材を捨てるだけで済む。しかし服役囚が果物や糖分の多い食材をため込んでいるのが見つかったら、手製の「監獄酒」を醸造しようとしている証拠だということになり、深刻な違反行為とみなされてしまう。

刑務所クッキングには、意外な材料が入っていることもある。アルバレズさんのこのレシピには、ポーク・ラインド(揚げた豚の皮)とクールエイド(粉末ジュース)が使われている。

オレンジ・ポーキー

<材料>

・即席麺 1パック(何味でも可)

・熱湯 1カップ

・米飯 1カップ

・オレンジ味クールエイド(甘くしていないもの) 3テーブルスプーン

・豚の皮やポーク・ラインド 1袋(約170グラム)

<作り方>

・袋に入ったままのラーメンを砕き、大きいボウルに入れる。付属の調味料は別の時に使うためにとっておく。熱湯をそそぎ、ふたをして、8分おく。

・余分な水気を切る。米飯を加えてよく混ぜる。そのままおく。

・電子レンジ可のボウル(大)にクールエイドを入れ、熱湯を1~2スプーン加える。シロップ状になるまでよく混ぜる。

・シロップに豚の皮をひとつかみ入れ、混ぜる。豚の皮すべてがシロップで覆われるまで繰り返す。

・豚の皮をくるみ、電子レンジで膨らむまで、5分ほど加熱。

・ラーメンとごはんの上に豚の皮をのせて、いただきます。

<注> ピリ辛味がお好みの時は、豚の皮(ポーキー)に辛味ソースをかける。

刑務所グルメ

服役囚たちが刑務所で作る料理が、ソーシャルメディアで爆発的な話題となり、レシピ集が次々に発表されている。

「The Convict Cookbook」(囚人クックブック)は、ワシントン州ワラワラにある州立刑務所の服役囚たちから集めたレシピ本だ。

「The Jailhouse Cookbook: The Prisoner's Recipe Bible」(監獄クックブック――囚人のレシピ・バイブル)は、服役した調理師がまとめた上級レシピ集だ。

「塀の中から家の中へ――刑務所クッキング」には、テキサス州ゲイツビルにある女子刑務所の服役囚たちによる200の「お手軽」レシピがまとめられており、食費節約が必要な一般家庭も対象にしている。

おいしい食事をたくさん作るというだけでなく、刑務所内の料理は服役囚同士の交流を生み、他人とのかかわりの中で創造性を発揮する機会を作る。

多くの人にとって、もっと幸せだった時の台所の様子を思い出すきっかけにもなる。

服役囚を支援してきたパフォーマンス・アーティストのカーラ・ディアズさんは、刑務所内で作られた様々な料理のレシピを集めてきた。チリ・ライム味のスナック菓子コーンナッツで作ったメキシコの伝統的なスープから、ポーク・ラインズのジェリーがけなど、バリエーションは多彩だ。

「刑務所で料理をするのは実は、味のためじゃないんです」とディアズさんはバイス・ニュースに話す。「人間性や人との触れあいや、塀の外で自分がどういう人間だったかを思い出すための作業なんです」。

アルバレズさんは、出所した今もラーメンをよく食べると話す。つい先日も執筆作業の手を止めて、カキのくん製とたまねぎのみじん切りとコリアンダーを使って、パッと手軽にラーメンを作ったという。ラーメンの匂いは今でも刑務所時代を思い出せる、それは「切ない」経験だとアルバレズさんは話す。

「チキンスープを作っていて……たちまち当時に引き戻された。あのときの気持ちがよみがえった。僕はひとりで、大人の男になりかけていて、でも刑務所にいた。すごく不気味な感覚で……あのほんのわずかなあったかいスープのおかげで、ちょっとホッとしたんだ。これさえあれば、家にいるみたいにホッと落ち着けるものがあるって。実際にはそこは家じゃなくても」

(取材協力 ジェシカ・ルッセンホップ)

(英語記事 Cooking with ramen: Prisoners get creative

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-37171898

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