2024年4月27日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年3月24日

 それは言うまでもなく、「一人っ子政策」が長く実施されたことの生んだ副作用である。特に農村部で男の子を求める傾向が強く、女の胎児の中絶の氾濫が男女比率の不均衡を引き起こして、「剰余男が3400万人」という深刻な結果を生み出した。

 問題は、この3400万人の男が今後どうなるのか、である。少なくとも中国国内の範囲内に限定して考えてみれば、この3400万人の男は将来、結婚する相手が絶対見つからないのは確実である。今後は中国の経済が繁栄しようとどうなろうと、この現実は永遠に変わることはない。彼らの結婚相手となるべき女性が3400万人足りないからだ。

3400万人という「時限爆弾」

 中国政府としてはこの問題を当然看過することができない。看過してしまえば、結婚できない3400万人の男たちによる犯罪や暴動の多発につながってくるからだ。彼らがいつか、政府を相手に「嫁よこせデモ」をやるのはまた軽い方であるが、「嫁強奪」のための暴動でもやってしまえばもはや収拾がつかない。この3400万人の男たちの存在は、政権にとっても社会安定にとっても危険な時限爆弾となっているのである。

 そのためにも、中国政府としては何としてもこの問題を解決しておかなければならない。が、どう考えても、問題を根本的に解決する方法は一つしかない。それはすなわち、この問題を中国の外部に転嫁させることである。要するに、中国国内では男女比率の不均衡で「嫁不足」が決定的なものとなっている以上、この余った3400万人の男たちを外国に出してしまい、滞在国の女性と国際結婚をさせることによって彼らの悩みを一挙に「解消」してしまうのである。

「余った」男たちが周辺国に送り込まれる

 そのやり方には次の二つが考えられる。一つは日本などの先進諸国が直面している労働力不足の問題につけ込んで、それらの先進国への大量移民を組織的に行い、「余った」男たちを送り込む戦略である。その際、相手国の政府の協力も必要不可欠だが、たとえば日本の場合、大政党の中でも「1000万人移民の受け入れ」を提唱している政治家がいるから、中国にとってとりわけ好都合であろう。

 この方法でも問題の根本解決につながらない場合がある。たとえば外国への移民政策が推進された中で肝心の女性も大量に流出してしまった場合、あるいはせっかく外国へ移民した中国の男たちが外国での「嫁取り競争」に敗北して、結局中国に戻って結婚相手を求めざるを得ない場合、中国政府は最後の手段として、次のような方策をとってしまう可能性がないわけでもない。

 それはすなわち、19世紀に流行った植民地政策の真似をして、軍事力を背景にした正真正銘の「植民地」戦略を推進することである。つまり、どこかの周辺国を占領して自国の余った男たちをそこに送り込み、「植民地」となった国での強制的な「通婚政策」の推進によって問題の最終解決を図るという方策であるが、理論的には、それが最後の選択肢として残されているはずである。

 もちろんそれはあくまでも、一種のシナリオにすぎない。が、もしこのような冷酷極まりのない植民地戦略が本当に実施されてしまった場合、その対象となる国々にとってまさに悪夢のような前景であるに違いない。自らの抱える問題を自力で解決できない中国という存在はやはり、周辺国(とりわけ日本)にとっての潜在的脅威であろう。


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