2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2010年5月28日

 「学生は、就職活動本番に向けた『成功体験』をインターンシップで積みたいと考えている。悲しいが現実は即物的な効果を求めている場合がほとんど」。ちなみにLRのインターンシップは1日完結のビジネスセミナーのようなものだそうだ。「本当は、現場で仕事に取り組むのが本来の姿であるし、それができれば素晴らしいと思うが、結局はそこに大きなニーズがないと感じる」。就業体験を通じて自身のキャリアを考えるのではなく、「就職活動をスムーズにするためのインターンシップ」という学生の意識もまた、インターンシップの短期化を促した一因であるようだ。

 このように、本来の趣旨から逸脱してしまったと言えるインターンシップ。実施しないという選択肢はないのだろうか。

踊らされる企業と学生

 ある企業の人事担当者がこう漏らした。「某就職支援サイトでは、07年卒採用までのサマーインターンの掲載料は無料だった。しかし、売り手市場ピークの08年には有料に。『インターンシップを実施しないと、良い人材が採用できませんよ』と企業が煽られ、個人的な感覚だが実施する企業が増えたと思う。そして09年にはまた無料になったが、今度は不況から買い手市場となり学生側が煽られた。言い方は悪いかもしれないが、企業も学生も踊らされていると感じる」

 企業と学生を躍らせている、と非難の的となったのが就職支援会社だ。「マッチポンプ式」といって、自分たちで火をつけ、水をまくというやり方が批判されるのは珍しくない。

 確かに、インターンシップにおいても「マッチポンプ式」は健在と言えるかもしれない。前出の人事担当者が話してくれたように、売り手市場のときは企業を煽り、掲載料を有料・無料と巧みに変更し、そして、買い手市場のときは学生を煽り、インターン実施企業を減らさない。ちなみに企業がある就職支援サイトにサマーインターンシップの募集ページを掲載するには、本選考分の通常料金にプラス20~50万程度かかると聞いた。

 「自分のキャリアを早い段階から考えることがなぜ悪いのか」「企業の人事担当者は本当に学生のことを考えてインターンシップに取り組んでいる。それを応援したい」と就職支援会社は言うものの、不安にかられてやみくもに就職活動を始める学生と、広報活動が主たる目的となり短期のインターンシップに疑問をもたない企業が存在する限り、就職活動の早期化は解決しないだろう。

 誤解を与えないように述べておくが、就職支援会社が悪というよりも、景気によって採用活動の需要と供給のバランスが大きく崩れてしまい、学生または企業の側にそのギャップを埋めたいというニーズが生まれる。そのニーズに応えようとするのが就職支援会社であり、商売である以上、マッチポンプが成立しやすいということだ。その構図にインターンシップもうまくはまった、と言えるのではないか。

問題解決のためには?

 この状況を打破するために、企業は横並びに1dayインターンシップをやるよりも、より良い人材を採用するための方法を模索してほしい。就職支援会社も、ぜひその取り組みを支援してもらいたい。学生も、軸をもたずにとりあえず流されるまま就職活動に飛び込んでいくことは、結局活動を長引かせ、自分の首を絞めることになってしまうことに気づくべきだ。自身のキャリアを考える手段は、インターンシップが全てではない。

 とはいえ、先述の構図がある限り、企業も学生も就職支援会社も三すくみになってしまって動けないのは自明。問題解決のためには、拘束力のない今の倫理憲章が効力を発揮しないことはすでに各所で言われている。インターンシップの定義、就職活動を大学生活の中でどのように位置づけるのか、企業は採用時期をいつからとするべきか。就職活動のあり方を、国がきちんと法制化し、ある程度の拘束力をもって決めていかなければ、解決はなかなか難しいであろう。
 

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