―マイステイズ・ホテル・グループの現状と経営の基本方針を教えてください
ホテル運営に特化し、2024年4月25日時点で国内151棟の運営を行なっています。2012年比で300%を超える急拡大をしていますが、現場のオペレーションに対し、本社の各専門部隊がバックアップをし、意思決定までのスピードが早いことがその大きな要因となっていると思います。各分野のスペシャリストのノウハウをフル活用して、安定したホテル運営を行なっていくことを経営方針としています。
―2022年に日本郵政が運営していた「かんぽの宿」の運営を引き継ぎましたが、リブランディングの方向性はどのようなものでしょうか?
2022年7月「亀の井ホテル」と名称を変更し、温泉ホテルとしてリブランドをしました。大分県別府の亀の井ホテルを創業した油谷熊八さんのおもてなしの精神を引き継ぎ、「親しみ」「ご当地」「伝統」をキーワードにさらにブランディングの強化も進めています。
―話題を集めている「ホテルニューアカオ」などの運営なども手掛けていますが…
こちらは独立したホテル名で運営する「マイステイズコレクション」というブランドで、元々のホテルをあえてリブランドせずに、そのまま運営を引き継いでいます。いずれもすでに全国的に認知度の高いホテルですので、食や絶景、体験などそれぞれの特徴や立地を生かした独自の「オンリーワン戦略」を取り、好評をいただいています。
―コロナ禍が終息し、円安の影響もあり、訪日外国人は急増していますが、ホテル運営にはどのような影響を与えていますか
主要な観光地や景勝地を訪れるインバウンドのお客様はかなり増えています。食事や温泉など日本的なものを体験して日本の魅力をもっと知っていただき、また来たいという想いを醸成する、そのような流れを作ることに力を注いでいます。
昨年10月に運営を開始し、今年4月1日にリブランドをした「亀の井ホテル 那智勝浦」は、世界遺産の熊野古道の参拝を目的とした海外のお客様が多く訪れています。ご当地の地酒や有名な生マグロ、近くの朝競りの体験を通して、日本や地域の魅力、素晴らしいカルチャーを感じていただきたいと思っています。海外の方の需要を掴むためにも、海外のトラベルサイトの口コミなども参考にして、改善点など探っています。食事では1品1品が個別に器に入って出てくる懐石料理は大変人気ですね。
―逆に国内の需要に関してはいかがでしょうか?
都市部に関してはビジネスでの動きが戻り、稼働も順調です。ビジネスでマイステイズ・ホテル・グループに宿泊されたお客様が、ホテルの施設やホスピタリティを気に入ってもらい、休日にはご家族でグループホテルに宿泊していただく、そんな好循環が生まれるようなサービスの提供を目指しています。
4月23日にリブランドオープンした「亀の井ホテル 筑波山」は、温泉に入りながら筑波山からの絶景が楽しめますが、ファミリールームを新設し3世代一緒に宿泊していただける部屋もご用意しています。7月には筑波山を自転車で楽しむ方に向けて「サイクルルーム」のオープンも予定しております。
―国内では人手不足にも直面していますが、どのような対策を取られているのでしょうか?
弊社の場合、会社の成長スピードが非常に早いので、人材確保は経営上の大きな課題です。良い人材を獲得するために採用チームを拡充し、採用後の人材トレーニングや新規に運営を開始したホテルの従業員の方の継続雇用などを行っています。
また国内の労働人口がシュリンクしていくため、外国人労働者による力も必要。2023年には千葉県成田市に「成田・ホスピタリティ・アカデミー」を関連会社が開校しました。外国人技能実習生を対象に、日本語などの法定講習や日本のおもてなしの心、文化などを学び、ホテルスタッフとしての心得を習得してもらい、日本全国のマイステイズ・ホテル・グループに配属され経験を積んでいただいています。海外のスタッフは日本人スタッフに比べハートフルにお客様と接する傾向が強く、お客様からも高い評価をいただいています。多様性が求められている現代社会ではそれぞれのいいところを吸収しあい、さらにレベルアップしたホスピタイティを実現できればと思います。
―今後のマイステイズ・ホテル・グループの展望を教えてください
ホテル運営数をさらに増やし、スムーズな開業を進めていくことは継続していきますが、今後はいかに安定的に運営していくことが課題になります。スケールメリットを活かしたロイヤリティプログラムをさらに進化させ、お客様に還元していくようなサービスを展開予定です。前職の航空業界と同様、ホテル運営はカスタマーファーストの世界。お客様の満足度をさらにアップするために、サービスやソフト、教育などに時間や資本を投資して徹底的に磨き上げていく必要性を感じています。さらに地域と連動し観光の活性化へ貢献していくことも大切です。宿泊したお客様が地域の魅力の発見や美味しいものを体感し、グローバルに発信していただくことで、日本全体の観光の活性化につなげていくことを目指しています
(2024年4月取材)