2024年7月20日(土)

JR東海「FUN+TECH LABO」

2024年7月20日

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対談後、「FUN+TECH LABO(ファンタステックラボ、以下、Fラボ)」の構想策定の段階から参画いただいているティアフォーの加藤真平代表取締役社長CEO兼CTO に、改めて、リニア中央新幹線のもたらす価値をお聞きしました。
ティアフォー代表取締役社長CEO兼CTO 加藤真平
WATARU SATO

ティアフォー代表取締役社長CEO兼CTO・加藤真平(以下、加藤) リニア中央新幹線の本質的な価値は「新たな経済圏の創出」に他ならないと思います。

JR東海事業推進本部担当部長・滝澤(以下、滝澤) 政府も令和3年7月に閣議決定された国土形成計画において、日本経済をけん引する東京圏、大阪圏、名古屋圏の三大都市圏が「リニア中央新幹線の段階的開業を経て約 1時間で結ばれるとともに、2027 年度に全線で開通予定の新東名高速道路や新名神高速道路等の高規格道路の整備も相まって、いわば一つの都市圏ともなる時間距離の短縮が図られる。さらに、リニア駅を交通結節の核とする新幹線・高規格道路ネットワークの形成により、1 時間圏の中に、多様な自然や文化を有する地域を内包する世界に類を見ない魅力的な経済集積圏域が形成されることとなる」としています。

加藤 リニア中央新幹線・高規格道路の整備に加えて、東京、名古屋、大阪には国際空港があります。もちろん、東海道新幹線も。これらの基盤があることによって、国交省の言う「三大都市圏が一つの都市圏ともなる時間距離の短縮」がもたされることが大きいです。私の専門は情報システムで、実はすでにオンラインコミュニケーションの際に生じる「遅延する」、「目線が合わない」などの弊害は解決していることが多いです。一方でどんなに、オンラインコミュニケーション技術が発展しても、「いざとなれば対面のコミュニケーションに切り替えられる」範囲でしか都市圏は拡大しないのではと考えています。

滝澤 確かに、都市経済学が専門の東京大学大学院経済学研究科の佐藤泰裕教授からも、リニア中央新幹線の開通により「東京への通勤圏が拡大する可能性がある」という示唆をいただきました。

加藤 速達性・快適性・安定性を備えた移動手段があることで、イザという時にストレスなく移動できるので、逆説的に人は都心部に住まなくなる、「移動しない自由」を選択できることになります。

滝澤 そうすると東海道新幹線やリニア中央新幹線の移動需要が減って、当社としては収益が減ることになります。

加藤 オンラインコミュニケーションの総量が増すと、付随的に対面のコミュニケーションの総量も増えると思います。加えて、対談で名古屋大学未来社会創造機構の武田一哉教授が指摘した通り、将来、通信で送ることができない容量の「情報」をリニア中央新幹線で頻繁に運ぶことになるかもしれません。こうして、オンライン・対面の双方の交流が活性化されれば、共創の可能性が高まり、リニア中央新幹線の沿線に、米・シリコンバレーを超える付加価値を創出する地域である日本版「デジタルバレー」が構築できるのではないかと本気で思っています。

JR東海事業推進本部担当部長 滝澤一博
WATARU SATO

滝澤 ありがとうございます、リニア中央新幹線計画を進めている主体として安心しました。付加価値を創出するための交流と共創を活性化するにはどのようにしたら良いでしょうか?

加藤 対談の中で東京大学未来ビジョン研究センターの渡部俊也教授が言った「特定の目的に向かって協働するコミュニティ」づくりが重要です。例えば、経済産業省が自動車分野のDXを巡る国際競争を勝ち抜く観点から2024年5月に策定した「モビリティDX戦略」では、「自動車産業のほか、スタートアップ、異業種、大学、研究機関、個人などの様々なプレイヤーが参画でき、ソフトウェア人材の獲得・育成に関する取組、企業間での情報共有や連携の促進、競争領域・協調領域の変化に伴う新たな取組の検討を進める」ためのコミュニティ「モビリティDXプラットフォーム」の形成を政策化しようとしています。

滝澤 これまでも官公庁や企業間で「検討会」や「勉強会」のようなコミュニティはたくさん構築されてきましたが、正直、新たな価値の創出、つまり「イノベーション」につながった実績のあるものはごく少ないと感じます。これらの既存のものと、「モビリティDXプラットフォーム」との違いは何でしょうか?

加藤 企業、団体などの組織はルールに基づいて活動していますが、それを超えて、特定の目的に興味・関心を持って企業やヒトが集い、交流することで付加価値を創出できます。これをコミュニティと定義しています。「モビリティDXプラットフォーム」では、官民でさまざまなイベントを開催したり、人材育成・獲得のための競技会を開催したり、それらの取り組みを積極的に発信したりしようとしています。大切なことは、デジタルライフライン全国総合整備計画などの他の政策や、自動運転の研究開発・社会実装を目的とした「RoAD to the L4」などの既存のコミュニティと競合せず、協調して進めていくことです。

滝澤 どうすれば「モビリティDXプラットフォーム」のような有機的なコミュニティへの参加者を増やしたり、既存の取り組みを進める方々と連携したりすることができるでしょうか?

加藤 渡部教授が対談で指摘している通り「ウェルビーイング(人々の多様な幸せ)」を実現するために「マーケットイン」で取り組んでいくことだと思います。その点、JR東海が始めたFラボは市民の「楽しい」を前提とした技術の活用やまちづくりへの貢献を目的とされていて、非常に良い取り組みだと思います。技術者の一人としてもワクワクする取り組みで、これからもできる限り協力していきたいと思います。

滝澤 ありがとうございます。老若男女問わず、多様な主体が豊かな生活を送れる地域づくりに貢献するためにはさまざまな方のお力をお借りしなければなしえません。今後もFラボからイノベーション創出促進に寄与する取り組みを発信し続けたいと思います。ディープテック企業の皆様を中心に、Fラボの取り組みに興味のある方がいらしたら、是非お声がけください。