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2017年7月19日

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小川たまか (おがわ・たまか)

フリーライター

1980年東京生まれ。教育、働き方、性暴力などを取材。『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(2018年/タバブックス)。Yahoo!個人「小川たまかのたまたま生きてる」(https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/)などで執筆。Twitter:@ogawatam

――予防接種の重要性があまり伝わっていない?

森戸:たとえば昔は細菌性髄膜炎って年間に1000人くらい発症していました。私が20年前くらいに研修医だった頃、髄膜炎ということがわかってご両親にお話するのがとてもつらかった。1歳未満の子が細菌性髄膜炎になると3分の1は亡くなり、3分の1は後遺症が残る。元気に治るのは3分の1という状況だったのです。それが今はヒブワクチンを4回打てば、ヒブによる細菌性髄膜炎の発症はほぼゼロにすることができます。むしろ身近に患者さんがいなくなったことで、怖い病気だという認識が薄らいでいるかもしれません。

――(編集担当:育児中のKさん)母子手帳もちょっとわかりづらいです。

森戸:私の知り合いの編集者も任せてくれたら編集するのにって言ってました(笑)。外国の母子手帳は定期予防接種が受ける順番通りに書いてあるけれど、日本は定期予防接種の後に任意予防接種が載っていたりして把握しづらい。受ける月齢順に並んでいたら、受け忘れがないし、確認しやすいし、誤接種が減るし、任意接種のワクチンの接種率が上がるでしょうね。

――母子手帳は育児に必要な情報がわかりやすくパッケージされているものだと思っていました。編集者が見て「わかりづらい」と思うのであれば、一般の方が見て……。

森戸:そうなんですよ。専門家が監修しているので情報自体に間違いはないですが、読み物として面白くない。何が重要で優先度が高いのかがわかりづらいです。ただ、最近になって便の色の写真が載ったのは改善ですね。お母さんたちの要望があったようです。

変わらない常識はごく基本的なこと

――育児について誰に聞いていいのかわからないことも多いし、「知らないことを知らない」ことも意外に多そうです。

森戸:育児を教える人がいないんですよね。医者に聞かれても子育てしていない医者もいっぱいいるし、医者は子育てを教える人ではなくて病気の専門家ですからね。基本的には、医者は病気の予防と治療、助産師はお産、保育士は預かっているときだけ、学校は教育機関。育児を習う場所ってないのでは。

――「個人の子育てに無暗に口出ししない」という意識もあるのだと思います。

森戸:思い込みのアドバイスではなく、正しい情報を元にした適切な指導を行う場所があるといいですね。ひどい事件があると「こんな人が親になるなんて」って言われがちですが、産んだら自動的に親としてのスキルが身にわけではないですから。最近の高校の家庭科の教科書には、「子どもにはこんな特性がある」とか、「子どもの洋服の選び方」とか、子どもの福祉や権利に関しても書いてあります。こういう教育を男女両方にしてくれると、いい家庭人になると思うのですけれど。

――教育を受けないまま大人になった人も多い。

森戸:個人的には、保育園に子育てのトレーニングとして預けるという方法もあると思います。なにをどうやって食べさせるとか、寝かしつけはどうしたらいいのかとか、誰もが感じる子育ての不安について情報共有の場としてあっていい。いろんな人と話すことが大事です。「母親教室」やイクメンではなく“いくじい”のいる地域もあるようですね。

――20年前と今では育児の常識が違う。ということは、現代の育児の常識も20年後にはガラッと変わるかもしれません。20年後もこれは変わらないだろうという常識はあるものでしょうか?

森戸:本当に基本的なことですね。お腹が空いたら母乳かミルクをあげなさいとか、抱っこは大事、赤ちゃんと目を合わせることは大事。オムツはちゃんと替えましょう。生物的に必要なものは変わらないでしょうね。アレルギーについては難しくてまだわかっていないことが多いです。先進国で増えているけれど、なぜ増えているかがまだわからない。

――20年後には判明しているかもしれませんね。ありがとうございました。

今回のポイント
・ネットの情報鵜呑みや個人の見立ては危険
・母子手帳はまだまだ改善が必要?
・育児中の親が情報共有できる場を
 


  
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