世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月15日

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 NAFTA再交渉が難航するにつれトランプがNAFTA脱退を再び口にするようになっていることについて、ニューヨーク・タイムズ紙の10月12日付け解説記事が、脱退は米国の利益にならないことを冷静に分析しています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/AzuAya25/Sudowoodo)

 トランプは、米国がNAFTAから脱退するとの脅かしを続けており、交渉が暗礁に乗り上げればそのリスクはまもなく現実となる。1994年のNAFTAの発効以来、米国の対カナダ及びメキシコ貿易は3倍以上に増大し、中国に次ぎメキシコは第2位の、カナダは第3位の輸出国であり、米国製品の大口輸入国でもある。もし脱退すれば経済と消費者にとって生ずる変化は大きい。

 トランプは、NAFTAを不公平な競争環境を作るもので、メキシコは米国から雇用を盗み、廉価で無税の商品に国境を開いたと非難した。トランプは、工場や雇用を米国に戻したいのである。しかし、NAFTAからの脱退は、米国企業及び消費者にとってのコストを増加させ、意図せぬ結果を招きかねない。

 NAFTAの下では3国間の貿易にほとんど関税がかかっていないが、米国が脱退すれば、メキシコとカナダは、WTOでの約束のレベルに関税を引き上げ、価格は上昇し、企業利益は削減されるであろう。

 企業はNAFTA成立以来、コストや資源の有利さを求めて国境を越えた複雑なサプライ・チェーンを築き上げてきた。海外からの部品供給に依存している自動車産業だけでなく、農業、エネルギー、小売業は影響を受けるであろう。このような貿易の仕組みはその製品の価格面で、ヨーロッパやアジアの他の製造業拠点と競争することを可能にしてきた。

 関税が引き上げられれば、メキシコやカナダで製造され、組み立てられている米国車の価格も、野菜売り場を満たしているメキシコの野菜・果物の価格も上昇するであろう。

 ホワイトハウスは、良い貿易協定は米国で製造する企業を助け、より多くの雇用を生み出す、と主張する。関税の支払いを免れるために米国内に移転する企業もあるかもしれないが、他の企業は、より安上がりだとして製造拠点全体を北米から例えば中国に移転してしまうかもしれない。米国の乗用車に対する関税は2.5%に過ぎず、企業にとってはNAFTAがなくなればアジアで製造した方がより安上がりだということになるかもしれない。

 NAFTAからの撤退により、3国は新たな貿易協定の段階に入るのか、或いは、メキシコやカナダとの二国間交渉が始まるのであろうか。むしろ、主張の対立によりNAFTAが崩壊した後にはカナダやメキシコは交渉をしようという雰囲気にはないのではないか。これは、米国を不利な立場に置くことになる。

 メキシコとカナダはNAFTAを維持することも可能である。EUが、メキシコ、カナダ両国とほとんどの品目について関税をゼロにまで引き下げることになっているFTAを締結していることにも留意すべきである。それらの製品の市場ではEU企業は米国企業に優位性を持つ。NAFTA後のもっともありそうなシナリオは、カナダ、メキシコが他の国々とのFTA締結を推進することである。両国は、トランプが就任4日目に離脱したTPPの成立について依然として議論しており、その交渉は、日本を含むいくつかの価値ある市場への自由なアクセスをもたらすものとなる。

出典:Ana Swanson & Kevin Granville, ‘What Would Happen if the U.S. Withdrew From NAFTA’(New York Times, October 12, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/10/12/business/economy/what-would-happen-if-the-us-withdrew-from-nafta.html

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