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2017年11月13日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

産經新聞前論説委員長

産經新聞前論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員などを経て、2015年6月から産経新聞社監査役。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

新たな挑発にも、武力行使は困難?

 もうひとつのシナリオは、北朝鮮がトランプ提案を拒否し、新たなミサイル発射や核実験を強行してくることだ。この可能性が高いとみる専門家は少なくない。トランプ大統領の今回の提案が真剣だっただけに、そうなれば、大統領はメンツをつぶされる。

 武力行使の可能性も強まるが、代償は甚大なものがある。「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領だから、日本や韓国の被害など気にしないという懸念もあり、米上院外交委員会の超党派の有力メンバーが近く、大統領の権限を制約する方法について議論するとも伝えられている。

 武力行使は、誰にとっても避けたいところだが、北朝鮮が米国本土に到達するような射程のミサイル実験を強行したり、米に何らかの被害を与えたりするような事態になれば、一気に現実味を帯びる。ただ、当面は在韓米軍への大幅な兵力増派という形で威嚇、牽制を強めるとみるべきだろう。

ダンマリなら“日干し”に

 もうひとつの可能性は、金正恩がトランプ提案に、イエスともノーともいわず、無視を決め込むことだ。この場合は、米国も攻撃のきっかけがつかめず、現在の緊張状態が継続する。決め手をつかみあぐねた米国は、いまの制裁を継続、強化して、北朝鮮が“日干し”寸前になるまで待つしか手段がなくなる。核、ミサイル開発に関して北朝鮮と取引を行っている中国企業の制裁もいっそう強化するだろう。

 しかしながら、制裁というのはいつの場合でも、罪のない市民を苦しめることになりかねず、米国としては慎重にならざるを得ない。こうしてみてくると、いずれの展開になろうとも、米国にとっては困難な途であることが理解できよう。 

トランプ大統領方針変更の謎

 今回のトランプ大統領の韓国国会での演説は、これまでとは大いに趣が異なっていた。韓国の繁栄をたたえ、北朝鮮の採ってきた政策がいかに無謀、誤りであるかを指摘、政策を変更すれば、これまでの行きがかりを捨て、支援を惜しまないと明言、寛容さを示した格調高い内容だった。国連総会という公式の場でさえ、「ロケットマン」と金正恩委員長を揶揄したことに比べれば、違いは大きい。スピーチライターをつとめる、スティーブン・ミラー上級顧問を同行させ、推敲を重ねた演説という。

 疑問は、これまで話し合いを排するかのような態度を採ってきたトランプ大統領がなぜ、今、方針を転換したのかだ。

 「北朝鮮が2カ月近く挑発行為を控えているのでチャンスとみた」「政権内でマティス国防長官やマクマスター大統領補佐官ら武力行使慎重派の意見に耳を傾けた」「外交的解決を求めている中国やロシアの顔を立てた」ーなどと、さまざまな見方がなされている。

 いずれの見方もそれなりに正しいのだろうが、外交政策に何の素養もなく、その時の気分で物を言うトランプ氏が、再び態度を変えるのではないかという懸念も米国内にはないわけではない。そうなれば解決はもはや覚束なくなるが、そういう状況の中で、日本はどうすべきか。

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