世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年3月14日

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 エジプトは、米国の中東政策にとり、サウジと並ぶ重要な同盟国である。ティラーソンの上記発言の通り、エジプトは、ISIS、シリア、リビア、中東和平など、中東における重要問題に関与し、役割を果たしている。エジプトと米国は、2+2をも模索するという。両国の協力関係は順調に進展している。

 エジプトが米国の中東における同盟国としてユニークな存在であるのは、一つには、エジプトとイスラエルの関係が良好であるという点が大きい。イスラエルと隣接するシナイ半島では昨年11月、ISISの「シナイ州」の仕業と思われるモスク襲撃テロが起こり300名以上の犠牲者が出るなど、シナイ半島でのテロ活動が活発となっている。エジプト軍はシナイ半島で対テロ作戦を実施しているが、これに関連してイスラエルの存在が改めてクローズアップされている。

 ニューヨーク・タイムズ紙は2月3日付けの‘Secret Alliance: Israel Carries Out Airstrikes in Egypt, With Cairo’s O.K.’と題する記事で、イスラエルがシナイ半島のテロ組織の拠点に対し、過去2年で100回以上の空爆をシシ大統領の承認を得て実施した、と報じている。同記事は「エジプトとイスラエルは秘密の同盟関係にある」と形容している。このイスラエルの行動は国際法上、集団的自衛権の行使ということになるから、あながち誇張でもない。

 エジプトとイスラエルの関係強化は、安全保障問題にとどまらない。2月には、米国の石油ガス会社Noble Energyと同じくイスラエルのDelek Drillingが共同で、イスラエルの海洋ガス田からの天然ガス150億ドル相当を、今後10年にわたりエジプト企業Dolphinus Holdingsに供給することを発表している。また、エジプトは、昨年12月の新たな海洋ガス田の操業をきっかけに、エジプトは地域におけるガス貿易のハブを目指すのではないかとの指摘がある(Nick Butler ,‘A power shift in the Middle East’ Financial Times, January 15, 2018)。実現すれば、イスラエルからの天然ガスも、エジプト経由でグローバル市場に輸出され得るということである。

 こうしたエジプト・イスラエル関係を考えれば、米国がエジプトを特別に重視するのは、自然なことである。3月の大統領選をめぐっては、シシ大統領は、主要対立候補を逮捕したり選挙妨害によって立候補辞退に追い込むなどしたとして、批判されている。これに対し、ティラーソンは、人権保護、透明で信頼性のある選挙プロセスなど、抽象的な一般論を繰り返すにとどめている。なお、エジプト経済の不調により、シシへの国内の不満は高まっている。そういう不安要因はあるが、米国とエジプトの関係は、当面は強化されていくと思われる。

  
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