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2011年5月23日

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 「やったのは『復活・公園遊び』です。まず公民館に『サッカーのお兄ちゃんが公園に遊びに来ます』とお知らせを配りました。最初は2人の小学生が来てくれた。僕ともう1人の選手の計4人で、鬼ごっこでめっちゃ遊びました。目の前にいてもステップ踏んで捕まらないから、子どもには僕がアイドルに見えたと思います。翌週は4人、次の週はたくさんの子どもたちが集まった。近所が賑やかになって、大人も見に来たし、おじいちゃんが『メンコを教えてやる』って加わった。選手20人で年間300回やって、鳥取西部の小学生が8000人のところ、延べ1万2000人の子どもと遊びました」

 一緒に遊んでくれたお兄ちゃんたちは、実はサッカー選手だというのだから、多くの人がガイナーレの試合に足を運ぶようになった。

 塚野はガキ大将が大人になったような人だ。みんなで何かをマジになってやるのが楽しい、だからみんなが盛り上がるように知恵を出して巻き込むというのを、ずっと続けている。溜まり場も鬼ごっこも、ガキ大将・塚野が関わることで、子どもも大人も一緒になって気持ちいい汗をかける。おもしろかったと仲間意識を強めた人々が、やはり仲間である選手を応援し、選手も燃える。こうして、Jを目指す一試合ごとに、選手も県民も本気になっていった。

 もちろん、鬼ごっこには集客につなげる計算もあっただろう。こんなアイデアを山ほど仕かけて、相手をその気にさせて、塚野は集客や集金をしてきた。人数も金額も、まだまだ十分ではないだろうが、その多寡を云々するより、ガイナーレが地域のキャラをつなぐ器になりつつあることがすばらしいと思う。

 考えてみれば、家族も地域も形だけではもろいもので、体験を共にして気持ちが近づいて、一緒に何かに本気になって、笑ったり泣いたりして初めて、お互いがつながっているという実感が持てるものだ。それなくして家族愛だ郷土愛だと教えられても、何だかよくわからない。みんなの気持ちが近づくには、みんなを巻き込み、盛り上げる人が必要だ。塚野はその一人だし、かつてはそんな大人が近所にいたように思う。大人たちよ、子どもたちと、もっと本気で遊べ。(文中敬称略)
 

◆WEDGE2011年6月号より


 

 


 

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