WEDGE REPORT

2018年10月2日

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「日本一の教育県の実現」を掲げる広島県の湯﨑英彦知事から直々にオファーを受け、2018年4月に、民間出身として初めて同県の教育長に就任した平川理恵氏に話を聞いた。(⇒湯﨑英彦知事へのインタビューはこちら

平川理恵氏(広島県教育長):1991年にリクルート入社。1999年に留学仲介会社を起業し10年間経営。2010年に公募で女性初の公立中学校民間人校長として横浜市立市ヶ尾中学校に着任。2015年に横浜市立中川西中学校長に着任。その間、中央教育審議会教育課程企画特別部会委員として新学習指導要領改訂作業に携わる。2018年4月より広島県教育長に就任。

――就任から5ヶ月余り経ちました。すでに県内の公立学校100校を視察されたそうですが、率直な感想と、そこで見つけた課題などあれば教えてください。

平川:まず、教員の質の高さを実感しています。教材をしっかり研究したうえで授業の組み立てを考える熱心な先生がたくさんいます。首都圏だと優秀な人は企業に集まってしまう傾向があると思いますが、ここでは優秀な人が地元に残って教員の道を選んでいる印象です。

まだ全校を見たわけではないのでなんとも言えませんが、課題としては、やはり首都圏の学校に比べてクーラーなどの設備や備品が整っていないので、そこは国のトップダウンに期待したいところです。

――知事のトップダウンに期待することはありますか?

平川:いちばん大切なのは、広島県としてどういう子供を育てたいかというビジョンをはっきり示していただくことです。この点について、知事はすでに広島県の教育大綱で、十年後の社会の変化を見据えたうえで、どういう子供を育てていくべきかといった指針を明確に示されているので、それに従って粛々と進めていく考えです。

――教育大綱には「主体的な学びを促す」という言葉が使われています。来年4月に開校する、国際バカロレア(以下、IB)・ディプロマプログラムの導入を検討している「広島叡智学園」は、まさにそのコンセプトに沿った学校になるのでしょうか。

平川:はい、広島叡智学園は湯﨑知事が目指している「主体的な深い学び」を具現化できる場になると考えています。いままでの学校教育は、先生は知識を与える側で、画一的な一斉授業を行うスタイルでした。しかし、広島叡智学園は生徒ばかりでなく、先生も保護者も地域の人々も、みんなが学べる「ラーニングコミュニティ」を目指します。ラーニングコミュニティでは、地域の人が学校に入って教える側に立つこともあります。

また、従来型の日本の教育では、たとえば理科の実験に対して事細かく安全配慮義務が定められています。ところがIBでは、最初にある程度の知識を与えるものの、あとは生徒が自ら計画を立てて実験を行います。そうすると、当然失敗も起こるわけですが、IBはその失敗に備えた設備を求めてきます。たとえば、薬品が目に入ったときにすぐ洗い流せる設備が必要となるのです。つまり、子供たちが失敗することを前提に設計されており、失敗を通じて深い学びを得られる仕組みになっているのです。

――広島叡智学園はすでにIBを採用している学校のなかで、どのような特色を打ち出そうと考えているのでしょうか。

平川:ひとつは、授業が英語で行われることです。そして、高校からは生徒の3分の1は海外からの留学生になります。また、広島叡智学園は公立校なので、高い学費を支払う必要がありません。IBのインターナショナルスクールでは通常、年間350万円から500万円もの授業料が必要になりますが、広島叡智学園であれば経済的に厳しいご家庭でも進学することができます。莫大な学費がかからないことは、海外の優秀な学生を招聘するうえでも大きな武器になるはずです。

――教育委員会における「上意下達の組織風土」を変えるための取り組みを行っていると伺いました。

平川:“今日、行く!長新聞”という手書きの瓦版をつくって、事務所内のトイレの壁に貼ってもらっています。おもに視察した学校の感想を書いているのですが、その目的は、「みんなの気持ちをひとつにして、子供に向かわせること」です。教育委員会はどうしても政治的に忖度するような場所になってしまいがちですが、つねに子供のほうを向いて、「子供にとって、良いか悪いか」でジャッジをできる場にしていきたいと考えています。そのためにもできるだけ教育長室から出て、フロアにいる職員に積極的に声を掛けるようにしています。

――ありがとうございました。

平川氏が隔週程度のペースで発行している「今日、行く!長新聞」のバックナンバー。手書きならではの温もりが伝わってくる。 写真を拡大

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