野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2018年11月27日

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11月24日、党首を辞任することを表明した民進党の蔡英文総統(写真:ロイター/アフロ)

 与党・民進党の歴史的惨敗に終わった台湾の統一地方選。にっくき蔡英文総統と民進党がたった2年半で自ら転んでくれた。その光景に、ほくそ笑んでいた人間が北京の中南海にいたはずだ。習近平・中国国家主席である。

 中国にとって台湾統一は理屈を超えた情念の世界であり、台湾を統一できなければ「領土完整」は達成されないという理論を組み上げているので、中国においては、指導者も民衆も、台湾の統一の実現という目標については一切の妥協を許さない、認めないという「台湾問題の神聖化」が存在している。

 だからこそ、台湾問題について、歴代の指導者はそれぞれ自らの台湾政策の指導方針を示してきた。鄧小平の「和平統一」、江沢民の「江八点」、胡錦濤の「胡六点」がそれだ。しかし、習近平は就任から6年以上がすぎているのに、なお、独自の台湾政策の公表を控えている。そこには、2014年のひまわり運動と、その影響をうけた台湾政治の大変化が響いていると見るべきだろう。台湾独立を綱領に掲げる民進党の勝利が続くなかで、台湾政策を定めることを控えてきたと思われる。

「統一地方選後」の中台関係の行方

 そのなかで展開されてきた習近平の台湾政策は、原則主義とソフトな圧力を組み合わせるものだった。蔡英文政権は発足当初から中国との対話継続を実現するために、就任演説で、中華民国体制の維持や「(一つの中国を含んだ)92年コンセンサスを歴史的事実」と述べるなど、多くの譲歩を行っている。しかし、中国はそれらを評価せず、「92年コンセンサス」を明確に受け入れない限り、台湾との対話を行わないと表明。馬英九時代は停止していた台湾の友好国の寝返りを認め、観光客の人数も絞り込み、台湾農産物の購入なども控える一方、中国に留学する台湾の若者には大きな優遇を与えるなど、硬軟織り交ぜた慎重な台湾政策を進めてきた。

 これは習近平政権にとっては、あくまでも台湾政治の展開の様子見を兼ねた暫定的な政策であった。2020年の総統選でも民進党が勝利してさらに民進党の天下が続くときは、中国は「台湾独立の阻止」を理由に武力行使を含めた強硬手段というハードなオプションも検討してきたと言われている。

 しかし、「友党」とみなす国民党の復調が目に見えるようになったことで、中国は当面、真綿で台湾の首を絞めていくような現状の路線を続ける可能性が高い。

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