2024年4月26日(金)

VALUE MAKER

2019年7月20日

 01年に初めて作った書類ケース「リーガルエンベロープ」は18年たったいまでも作り続け、店頭に並んでいる。何も入れないと薄くたためるが、マチがあってしっかり書類が入る。手で握る部分は革で、耐久性が高い。

 当初は想定していなかったが、最近はノートパソコンを入れる人も増えた。まさしく、ありそうでなかった便利なモノの代表格だ。

 「妥協しないモノ作り」には最適の場所である日本だが、その最大の難点は「安いものが作れないこと」だった。

 また、職人の手作業頼みの商品では、難しいものになればなるほど、数が作れない。どうしてもコストが高くなってしまうわけだ。

 例えば、構造の設計を一からデザインしたボールペン「チャンネルポイントペン」は無垢の金属棒から職人がひとつひとつ手作業で削り出している。

左:最初の製品となった「リーガルエンベロープ」。マイクさんが友理さんのために革と布を素材にしてボタンに紐を巻いて閉じる封筒を作った
右:織り機のシャトルから発想を得たアルミ削り出しの「チャンネルポイントペン」

 ペンをポケットなどに差した際にクリップだけがネクタイピンのように見えるデザインはシンプルだが、それを実現するのはペンの構造から考える必要があった。

 当然、「ポスタルコ」の製品の価格設定の仕方は、一般のステーショナリーとはまったく違う。

原価を積み重ねて価格を決める

 普通ならば顧客のターゲットを定めて価格帯を決め、それに合わせてコストを絞るようなやり方を大手メーカーなどは採る。

 だが、「ポスタルコ」は、まずデザインを決め、職人と製造方法を詰めた段階で、原価を積み重ねて販売価格を決める。職人にも満足してもらえる対価を払うよう努める。

 「もちろん、無駄なコスト増になることはお客様のためにならないので避けます」

 と、マイクさん。例えば、数センチの違いで規格から外れコストが2倍になるようなものは、規格内に収めてコストを圧縮する。

 だから、「ポスタルコ」の商品は決して安いわけではない。書類ケースは税込みで3万円ほど、ボールペンは4万円前後だ。名刺入れは1万2960円だ。

 できあがるまでの手間暇や職人の手作りであることを考えれば、相応の値段とも言える。また、長年使い続けることができれば、むしろ安い、と言えるかもしれない。


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