使えない上司・使えない部下

2019年1月17日

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障害者は十人十色、百人百様。指導や対応は一概に決まったものがない

 私どものセンターに籍を置き、企業や工場で就労するのは、労働意欲があり、働くことができうると思える方たちです。ここにいる知的障害者は、IQ 35ぐらいから70前後。理解力は幼稚園児から小学校高学年程度のレベルになります。このような状況を踏まえ、障害者が「使えない」とするならばおそらく、指導する側に問題があるのではないか、と思います。彼らは単純作業をすることは立派にできます、人によっては、訓練次第で複雑な作業にも対応可能です。

 彼らは、単純作業は、100%できるようになるのです。我々では続かないようなおしぼりの検品作業を連続してできます。つまりは、教える側の力量でしょう。指導員の力量で、障害者の力は変わっていきます。

 指導員の経験の浅い人は、就労する障害者の姿を見ると感動するんです。次に、障害者の様子を観察するようになります。そして、いろんな本を読むのです。その知識をもとに「こうしなければいけない」と、障害者に教えようとします。ここで、問題が起きるのです。障害者は十人十色、百人十色。指導や対応は一概に決まったものがありません。障害者の方の実情や実態を心得ることなく、1つの型にはまるような指導をすると、困ったことになりえます。障害者の方からすると、一度、刷り込まれた作業や間違った指導はすぐには抜けないのです。彼らは間違った学習を覚えてしまうと、それを意識から消すことがなかなかできないことがありうるのです。

 しかも、このような指導員は、障害者が理解できないようなことまで盛んに繰り返す傾向があるのです。障害者は視覚優位で、まずは言葉より見て覚える傾向があります。それにも関わらず、指導員が「なぜ、できないの?」と責めてしまうことがあります。このような接し方を繰り返す場合は、有資格者であろうとも、このセンターでは職業指導員の役割から外れてもらいます。

 まずは、経験が浅い指導員はこのセンターの先輩の後について、個々の障害者への指導を学んでほしい。経験の豊富な指導員は、障害者との信頼関係を作るところから始めていることがわかるはずです。指導員の力量=利用者の伸び幅になるのは、間違いありません。同じ障害者でも、指導員を変えると、大きく変わることがあります。そのような差がつかないように、センターとしてミーティングを密にして、指導員のレベルアップ研修などをしています。

 センター設立当初は、福祉で仕事をしてきた人を採用しなかったのです。私たちが力を入れる就労継続支援 A型では、企業で働いてきた経験者を優先して採用を行いました。ここは、障害者が一般就労できるようなところにまで、力を上げていくことが目標です。その際、企業で培った経験を活かす指導力が必要になります。

 就労継続支援A型では、指導を中心に支援を行います。割合は「指導7」に対し、「支援3」と考えています。優しく温かく見守るだけでは、A型での就労支援は難しいと思います。彼らができないことをできるにしてあげることが大事です。

 一方、福祉を経験してきた方は、やさしく暖かく見守りつつ障害者ができることを一緒に手をとりながら行う「支援」が中心になると考えています、支援力はたしかにすばらしいものがあります。しかし、これは指導とは違うと私は考えています。

 指導をして訓練を繰り返すことで、必ず、伸びます。だから、私たちはあきらめない。今、できなかったとしても、違う手だてがきっとあるのです。指導員と障害者が、信頼関係をつくると、力はすごく伸びます。だからこそ、このセンターの指導員は「使えない」とは言いません。「ダメだな」と思うのは、障害者に対して失礼です。

 実は、私自身が発達において偏りがあるのではないか思うことがあるのです。私も嫌な思い出を何かのきっかけでリアルに思い起こすことが多いのです。だから、彼らに親近感があります。前職(FSX株式会社)で多くの経験をさせていただきました。センター設立後も、前職や多くの指導員、支援者、企業、自治体関係者などに支えられてきました。障害者やそのご家族、支援者にも感謝しています。ありがたいことですね。これからも、何らかのお力に立ちたいと思っています。

  
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