世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年4月18日

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 2019年4月1日、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)首相は、北京を訪問し、李克強首相、習近平総書記と、あいついで会談した。

(bonezboyz/Marina Galunnikova/Oleksandr Kyrylov/iStock)

 ニュージーランドと中国との関係は、本年に入り、幾つかの原因から悪化しており、首脳会談を通して、その打開を図り、両国の関係改善を狙ったものとみられる。

 ニュージーランドと中国との関係が悪化した原因の1つは、ニュージーランドが、米国と機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」と呼ばれる5か国(米英加豪NZ)のメンバーであり、米国が安全保障上の理由から、中国の大手通信機器メーカ―である華為技術(ファーウェイ)の製品を使用しないことに同調していることである。

 中国は、ニュージーランドへの嫌がらせとして、中国観光客に対して、ニュージーランドを渡航先から排除するよう指導している。これにより、ニュージーランドの観光収入は減少する。中国は、ニュージーランドの最大の輸出先でもあり、ニュージーランドとしても、中国との関係改善は、重要課題である。

 もう1つの両国の関係悪化の直接の原因に、2月に起きたニュージーランド航空の上海着陸拒否事件がある。これは、ニュージーランド航空が中国に提出する着陸申請書類の中の「台湾」の表記が、中国にとって気に障ったからだそうだ。「中国台湾」と書くことを中国は要求していたそうだ。

 今回の中国とニュージーランドとの首脳会談では、両国の貿易・投資の関係拡大では一致したようである。ニュージーランドは、中国が巨大経済圏構想として掲げる「一帯一路」構想について、既に2017年3月には、中国とインフラ整備等で協力する覚書に署名している。今年4月下旬に、北京で開催される「一帯一路フォーラム」には、ニュージーランドからデイヴィット・パーカー(David Parker)貿易・輸出振興大臣が出席する予定である。

 中国の外交政策のやり方には、一定の戦術がある。1つは、まず小国から攻めて行く。本コラム4月8日付の「エアバス、港、ボルドー・ワイン、5G、習近平の軍門に下る仏・伊・モナコ」でも書いたが、地域内ないしグループ内で、経済的に困ったり弱っていたりする国にアプローチする。今回も、「ファイブ・アイズ」の内、一番小さな国のニュージーランドに嫌がらせをしたり接近したりする。ファーウェイ問題にしても、米国の要請でカナダ当局によって逮捕されたファーウェイのCFO孟晩舟に対する報復として、中国はカナダ人を逮捕したが、その矛先は米国人には行かなかった。

 もう1つ、中国が「核心的利益」と定めている台湾問題やチベット問題等に関して、中国は相当神経質になって対応していると言うことである。ニュージーランド航空の問題にしても、書類を書き換えてすぐ対応する等できそうであるが、それに巻き込まれた乗客はたまったものではない。かつて中国国内で起きた反日暴動に関しても、友好的にビジネスをしていた日本企業等が被害を受けた。ダライ・ラマ14世に会ったことで、その国の輸出品が中国の税関でストップされたり、要人の交流が中断したりすることもある。

 欧米では既に認識されているが、貿易が自由化され裕福になれば、民主化が進み平和が訪れるというのは、幻想であったようだ。今や、お金が物を言い、強い者に巻かれる風潮が、国際政治でも蔓延っている。自由民主主義や人権、法の支配等を掲げる価値を基準とした外交はどうなって行くのか。「米中対立」の中で、今後が注視される。

  
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