Wedge創刊30周年記念インタビュー・新時代に挑む30人

2019年5月16日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)、近著に『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』(小学館)など。

本記事掲載のWedge5月号『創刊30周年記念インタビュー「新時代に挑む30人」』では、「ホンダジェット」の生みの親・藤野道格氏 やラグビー日本代表・リーチ・マイケル氏、USJ復活の立役者でマーケターの森岡毅氏、大峯千日回峰行を満行した大阿闍梨・塩沼亮潤氏など様々な分野で令和の時代を牽引していく30人にインタビューを行いました。

銀行口座やクレジットカードを持たない金融難民が20億人もいる。そんな中、働いた分の給料をその日のうちにスマホに払い込むシステムを開発した日本人に、世界から視線が注がれている。

高崎 義一(たかさき・よしかず):1957年生まれ。熊本工業高校卒業後、板前、外食チェーン店オーナーを経て、95年に勤怠管理システム開発・販売会社キズナジャパンを創業。2015年にドレミング設立、17年には世界展開の拠点となるドレミングホールディングをシンガポールに設立。(写真・さとうわたる)

 「ドレミングの力を借りたい」

 日本のフィンテック企業「ドレミング」に英国政府機関から連絡がきたのは今年2月のことだった。その背後にいるのは、紛争地域での平和の構築、人道支援を行う国連プロジェクトサービス機関(UNOPS。以下、国連)だった。南スーダンでは道路建設を行い、大地震に見舞われたハイチでは避難民のために住宅供給などをしてきた機関だ。

 国連がドレミングに助けを求めた地域は中東のイラク。独裁者サダム・フセインは排除されたものの、主導権を握ろうとする宗教勢力・近隣諸国の思惑や、大国の介入に翻弄(ほんろう)され続けるこの中東の大国は、今やおよそ200万人もの難民を国内に抱えている。

 このイラクに人道支援を続けているのが国連なのだ。彼らは電力、水不足に喘(あえ)ぐ同国にそれらを提供できるインフラを建設する一方で、難民等に現物の資金の提供も行っている。しかし、それが直接、彼らの手元には届いていない現実に直面もしていた。そこで国連が目をつけたのがドレミングだった。

 ドレミングのシステムが広く世界に知られるようになったのは、あの「Uber」を世に送り出した米サンフランシスコでのITベンチャーコンテスト「テッククランチ」だった。2015年9月のことだ。

 創業者、高崎義一の「銀行口座やクレジットカードを持たない、世界でおよそ20億人いると言われる金融難民を救いたい。搾取なき社会を作りたい」という理念と希望を具現化するドレミングのシステムは欧州で強い関心を呼び起こす。

 ドレミングが提供するサービスを一言で言ってしまうと、労働者が働いた分の賃金を、月給制ではなくその日に、しかもスマートフォンに電子マネーで払い込むものだ。賃金の残高は、ドレミングが雇用先に提供する勤怠管理システムに記録される。労働者はその残高に応じてアプリで買い物ができる。

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