家電の航路

2011年12月31日

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前田 悟 (まえだ・さとる)

金沢工業大学客員教授

(株)SOW他複数企業特別顧問。1951年岡山県生まれ。ソニーで、世界初の無線TVエアボード、ロケーションフリーTVなどを開発。07年にケンウッドに移籍し、2008年JVC KENWOOD Holdings㈱執行役員常務に就任、2011年6月退任まで技術戦略、新規商品開発を担当する。2010年7月から、金沢工業大学客員教授、現在は複数企業の特別顧問も行っている。

 6月13日、久しぶりにニューヨーク(以下、NY)に行った。NYは行く度に何かが変わっており、何時も刺激を受ける私の最も好きな町の一つである。ミーティングの後時間があったのでセントラルパークを5番街の方に歩いてみたが、巨大なビル群の中に、突如地表からガラス張りのキュービック、中にりんごのマークが現れた。Apple Storeである。近くによってみると、ガラス張りで非常に開かれた空間が現れ、地下一階の店内が多くの顧客で混雑しているのがよく見える。地下一階には階段、あるいは透明のエレベータで下りるようになっており、中に入るのに何の違和感もない感じである。

 中に入ってみると、フロアに大きなテーブルがいくつもあり、どのテーブルも客が埋め尽くし、製品をいじくっている。また、各商品の説明には発売したばかりのiPad2を使っており、説明員はいない。ここに行けば、新しいLife Styleがすべて揃うという感覚を与える新しい空間、世界を感じる場所になっている。

新しさの提案がないSony Shop

 一方、Apple Storeから歩いて5分のところにある、Sony Shopにも行ってみた。私もかつてよく行ったところであり、とても懐かしくも感じたのではあるが、それ以上にApple Storeとの違いを見て愕然とした。Sony Shopはソニーアメリカの古い重厚なビルの一階と地下一階にある。客の数に比べスーツの従業員が多く、入りづらい。加えて、Apple Storeと異なり、外からは見えない。商品は、ただ陳列をしてあるだけで、どれが新商品というアクセントもなく、まして、客に触れてもらうべきPlayStationは地下での展示だった。因みに私が開発したロケーションフリーテレビもこの地下であった。

 また、量販店の代表であるBest Buyに行ってみた。Apple Storeと比べて客も少なく閑散としており、これは日本の量販店と同じであり、何らLife Styleをイメージさせることはなく、目的の商品を探すのに苦労するほど種々の製品を陳列しただけの状況である。そうなると、価格で客にアピールするしかなくなる。やはり、今の家電メーカーの生きる道は、製品個々の魅力に加えて、次の3年先、5年先のLife Styleの世界についてトータルのイメージを出せる商品群を出していくしかないと思われる。このように考えると、家電量販店も今のように単にすべてのメーカーの種々の商品を羅列するのではない形も考えるべきであろうし、個人電器店も生きる道も出てくるように思う。

 そんなBest Buyで一つだけ感じたことがある。それはサムスンのTVの新機種である。今のTVのデザインはどこもピアノブラックであるが、これはサムスンが始めたものである。しかし、サムスンの新機種はピアノブラックの次のものを出していた。縁が1センチくらいで非常に狭く、それもシルバーメタリックを合わせたとても洗練されたものであった。Appleの状況とは異なるものの、やはりTVで世界No.1の地位を築いているだけのことはあるように感じた。

◆WEDGE2011年8月号より


 

 

 


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