立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年5月18日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 
写真:ZUMA Press/アフロ

 日本維新の会の丸山穂高衆院議員の「北方領土を戦争で取り返す」発言(5月13日)で世論が騒然。最終的に党としては影響の拡大を避けるために、丸山氏に厳しい除名処分を決めた。この件は、拙稿「日本企業が『議論』を封殺する本当の理由」にも述べたように、「議論」次元の問題ではないかと考える。

問い方がまずかった

 北方領土をロシアと戦争で取り返すのは賛成か反対か――。丸山氏が北方領土の元島民に投げた質問は、単純な質問として馬鹿げている。これに答えようがないからだ。

 「戦争」という選択肢は、憲法上の規定もあり、日本人にとって基本的に取り得ない選択肢である。取り得ない手段の是非を人に問いかけても、相手を困らせるだけだ。現行憲法下で、「はい、戦争をしてでも北方領土を取り返そう」という答えは封印されている以上、タブーである。

 一方、「領土を取り返す」という目的には異論を唱える余地がない。外国に不法占領されている我が国の固有領土を取り返すことは当然だ。この通り、目的が正しくても、手段が間違っていると、問題になる。しかも、この手段の間違いはちょっとした間違いではない。「戦争」という日本人がもっとも忌避している選択肢が持ち出され、まさに本質的な、受け入れ難い間違いだった。

 丸山氏の質問を変えてみよう――。「もし、戦争が北方領土を取り返す唯一の手段だとすれば、北方領土を放棄するか」

 問い方を変えることによって、雰囲気が一変する。まず「戦争」という手段をあくまでも仮説として打ち立てる。さらに論点は「領土を取り戻す」ではなく、「領土を放棄する」という対立面に置く。つまり、「戦争をするかしないか」よりも、「領土を取り戻すか放棄するか」の議論をしようということだ。

 この問いかけを問題視することは難しい。もし問題視するなら、「戦争が北方領土を取り返す唯一の手段だ」という仮説に対して、「いや、戦争以外の手段もある」と、異なる仮説を打ち出す必要が生じる。これは建設的な議論になり、大変結構なことではなかろうか。

 戦争以外の選択肢なら、話し合うことだ。いままで、日露両国がさんざん話し合ってきたが、まったく結実していない。なぜだろう。もしや「話し合い」の仕方がまずかったのではないか。ほかに何か良い話し合いの方法はないだろうか。と、議論が深まる。

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