家電の航路

2012年1月24日

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前田 悟 (まえだ・さとる)

金沢工業大学客員教授

(株)SOW他複数企業特別顧問。1951年岡山県生まれ。ソニーで、世界初の無線TVエアボード、ロケーションフリーTVなどを開発。07年にケンウッドに移籍し、2008年JVC KENWOOD Holdings㈱執行役員常務に就任、2011年6月退任まで技術戦略、新規商品開発を担当する。2010年7月から、金沢工業大学客員教授、現在は複数企業の特別顧問も行っている。

 日本のどこのテレビメーカーも、価格下落で利益が出せないと言われて久しい。本当にこのまま方策はないのか? 答えは否である。実は、単に新しいアイデアを出すことを忘れ(あるいは、そもそも知らないのかもしれないが)、諦めてしまっているからではないかと思う。

 液晶(LCD)テレビは、部材であるLCDがコストの7割を占めているため、付加価値を付けるところは残りの3割しかない。しかも、LCDの値下がりが激しいため、関係者からは「利益が上がらない」「お手上げだ」という声をよく聞く。 ところが、もしそうであればタブレットPCやスマートフォンなど、LCDのついた商品はすべて儲からないということになる。だが、iPadもiPhoneも絶好調でアップルは最高益を出し続けている。ただ、これに追随して(真似ている?)多くのメーカーがやっているAndroidやWindowsをベースとしたタブレットPCやスマートフォンは、日本メーカーのテレビと同じ轍を踏む可能性が高いが。

アップルにもできないことを考える

 テレビに話を戻せば、なぜLCDを除いた残り3割のところに他社がやらない、それこそアップルにもできない付加価値を載せて、その割合自体を変えるということをやらないのか。例えば、インターネット機能に付加価値を付けることはできる。

 今のテレビに搭載されているインターネットの機能は、とてもテレビで使いたいと思う内容ではない。だからブラウザー一つとっても、使い方が面倒くさい。この解決を提供できるだけでも大きなアドバンテージになり、かつそこから新たな利益を生み出すことができる。それにもかかわらず、PCやスマートフォンを含めた携帯電話で流行のSNSを、テレビでの使用に向いているかどうかの判断なく単に搭載している。

 また、テレビは大きくなりどんどん薄くなるが、逆に音質は悪くなる一方である。ここにも、一つの大きなヒントがあると言える。音質にこだわればホームシアターといった大規模になったものしかないが、オーディオもテレビの映像も、今はモバイル系の手軽な機器が多い中、ホーム・リビングの特長を生かして、もっと気軽に楽しめるものができるはずだ。だが、真剣に考えられているようにも思えない。

 アイデアが出てこないがゆえに諦めてしまうから、安易に考えてしまう傾向がある。ハードウェアではコスト競争のアジア勢を気にし、一方でITをベースにした世界初のビジネスモデルを作ったアップルなど米国勢に追従することを考えている。そうではなく、今までの家電ハードウェアを作った日本の技術と、それを元に世界初の商品を出してきたアイデアをもう一度見直すべきだ。

 日本の家電メーカーを引っ張ってきた私の大先輩である大曽根幸三さんは、「オリジナル企画がなくなった時が恐い時である。Successor(後継)企画だけではいずれジリ貧になる」と言われているが、今まさにその時ではないかと思われる。諦めている暇はない。

◆WEDGE2011年9月号より



 

 

 


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