2024年4月26日(金)

日本人秘書が明かす李登輝元総統の知られざる素顔

2019年8月15日

「経済発展なんてどうでもいい」という中国政府の本音

 先日、台北や上海などの支局長を歴任したベテラン新聞記者と話す機会があった。そこで私は、至極単純な疑問ながら、なかなか明確な答えを得られない問題を尋ねてみた。

 「中国は1989年の天安門事件によって経済制裁を受け、まさに国際社会の孤児になった。ありとあらゆる情報が駆け巡るこの時代に、もし天安門事件の再来のような事件が起きたらどうなることか、中国の指導者は分かっていないんでしょうか。それとも分かっているけどやらざるを得ないと思っているんでしょうか」

 思えばこの疑問そのものが、そもそも西側の自由主義陣営で生まれ育った私の楽観的な考えだったといえる。つまり、「国際社会が注視するなか、当局が暴力で市民を抑圧するようなことをするわけがない」「国際社会から孤立し、GDP第二位の地位から滑り落ちるようなやり方をするはずがない」という発想だ。

 ただ、こうした「国際社会が見ている」「暴力的な行為を世界に発信することになる」といった発想は、やはり自由民主的な国で育ったゆえのものだったようだ。

 件の支局長曰く「中国の指導者たちは、おそらく国の内側にしか目を向けていないでしょう。外からどんなふうに見られているか、などというのは二の次三の次です。暴力だろうが軍隊だろうが、なんとしてでもこの香港の『暴徒』を制圧しなければならない。さもなくば、この『暴動』がウイグルやチベットなど、共産党政権が抑圧してきた地域にまで飛び火する。この場合、極端にいえば経済発展なんかどうでもいいんです。つまり、経済は頑張れば何十年かで取り返せるかもしれないけれど、党が無くなったら彼らは終わりなんです。だから党を守るためなら、外からどう見られているかなんてどうでもいい。そういうことです」

iStock / Getty Images Plus / TheaDesign

 冒頭、完全撤廃を求める香港人のデモは「中国人の『口先だけならなんとでも言える』習性」を熟知しているからこそ、と書いた。時代は違えど、彼らの本性が変わっていないことは歴史が証明している。


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