WEDGE REPORT

2012年6月21日

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「千年に一度」と言われる巨大津波に襲われた三陸沿岸。
まちを守るはずの防潮堤は、全く歯が立たず、多くの住民と建物が流された。
住まいや雇用の復旧が進まないなか、
巨大防潮堤の建設ばかり優先されることに住民のあいだから不満が噴出する。
震災以来、住民の流出に歯止めがかからない。
巨大なコンクリートの塊だけが三陸の海岸に残ることにならないか。

 「完成までに何年もかかるような防潮堤を建設するぐらいなら、もっと優先すべきことがあるだろうに」 東日本大震災による津波で大きな被害を受けた岩手県大槌町で、被災者の支援活動をする女性は防潮堤の建設計画をこう批判する。

 昨年3月11日に大槌町を襲った津波は、国土地理院によると、最大で22メートルの高さの場所まで押し寄せた。中心集落の町方地区では、津波によって建物のほとんどが流され、町の全住民の13人に1人にあたる1256人が死亡、あるいは行方不明のままだ。

東日本大震災の津波で倒壊した岩手県大槌町の防潮堤 (撮影:編集部)

 記者が取材に訪れたのは、震災から1年2カ月が経った今年5月下旬。防潮堤は当時のまま倒壊した無残な姿をさらしていた(写真)。

 新たな防潮堤は町内の海岸線に沿って延長4.8キロにわたって建設しようというもの。町内で最も高い町方地区の防潮堤は14.5メートルにも達し、5階建てのビルに相当する。

 こうした巨大防潮堤の建設はなにも大槌町だけではない。岩手県の三陸地方の各市町村でも建設が決まっており、県内に建設される防潮堤の建設費は合計2700億円に上る。

 ところが、この巨額事業に対する受け止めは冒頭の女性だけでなく、取材した住民は一様に冷ややかだ。震災による津波では以前からあった防潮堤が十分に機能せず、多くの被害を出したにもかかわらず、こうした反応は意外に思えた。

14.5メートルに納得していない住民

 そもそもなぜこれほどの巨大な防潮堤を建設することになったのか。

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