世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年7月13日

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 6月12日付New York Times紙で、Anatol Lieven英キングスカレッジ・ロンドン教授は、米中が戦争を回避するには、両国が「折り合い」をつける以外にないと、豪州発「コンサート・オブ・パワー」(協調体制)論を後押しし、中国の行動を容認しつつ、米国は自制すべきだ、と主張しています。

 すなわち、(1)中国は東アジア以外では大人しい。世界覇権(global leadership)を狙うには時期尚早だし、狙ったところで失敗すると知っているから、行動は商業動機に貫かれている。しかし(2)東アジアでは態度が異なる。米国の入域を阻む軍事力をもち、ナショナリズムに裏打ちされて、周辺島嶼に紛争を抱える。ここでもし(3)島嶼をめぐる中国と第三国間の紛争が起きた場合、ナショナリズム以外に正統性の根拠をもたない中国は非妥協的にならざるを得ないだろう。(4)米国が域内の国々と同盟を結んで軍事的関与を続けた場合、米国は二者択一を迫られる。例えば、中越間の紛争を無視することで、頼りにならない国だと思われるか、さもなければ中国と戦うかで、(5)戦争になれば、米中双方とも勝者にはならず、核戦争にでも発展すれば、文明を破壊することになろう。

 では、米中戦争を回避するには、HughWhite(豪州の「コンサート・オブ・パワー」提唱者)が説くように、両国がお互い、「ここから先は踏み込まない」とする線を様々な問題について引き、文字通り「折り合い」をつけることが重要である。

 最も重要なこととしては、「中国は台湾の武力併呑を放棄する。米国は台湾が中国と再統一されるべきことを、公に標榜」すべきである。「米国のプレゼンスを中国は容認する。米国は、中国の現存政治秩序が正統性をもつことを認める」べきだ、と主張しています。

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 Lieven教授の論説は、本年4月に豪州で刊行されたHugh White著”The China Choice: Why America Should Share Power”を紹介する形で、その論評を支持する内容になっています。このように、太平洋に米中協調体制を築くことを提唱するホワイトの主張が、想像以上に英語圏インテリ層の関心をひき、このリーヴェンの筆を得て、米国大手紙の紙面にデビューした形です。上記主張は、ともすると、米国は、グアム・サイパン以西の諸地域・諸海域を放棄し、日本を含め、中国の手に委ねよと言うに等しい所説となります。中国が秘かに念ずるところの太平洋分割統治論を、先取りして準備しているようなものです。

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