世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年12月26日

 モルガン・スタンレー投資会社のRuchir Sharmaが、フォーリン・アフェアーズ誌11/12月号への寄稿論文で、BRICsを中心とする途上国の経済が一斉に急成長したのは2000年代の特異現象であり、今後は、BRICsをはじめ途上国の成長は緩慢かつばらつきのあるものとなり、一握りの国しか先進国の水準に達しないだろう、と述べています。

 すなわち、過去数年、BRICSを中心とする途上国の経済が急速に発達し、先進国経済と差がなくなるということが盛んに言われた。1990年代の危機を脱出し、低金利の金が豊富にあった2000年代には、新興国経済がいっせいに急成長し、不況は世界から姿を消したかのごとくであったが、しかし最近の世界経済の低迷で、中国の成長は急速に低下し、他のBRICS国の成長率も軒並み急落した。

 途上国と先進国の差がなくなるというのは神話である。ハーバード大学の経済学者Dani Rodrikによれば、湾岸の産油国や東アジアの「虎」の諸国を除き、1950年から2000年にかけて、先進国と途上国の一人当たりの所得の差は一貫して開いている。新興国が追いつき始めたのは2000年以降であるが、2011年現在、富裕国と途上国の一人当たり所得の差は、再び1950年代のレベルに戻っている。

 10年以上にわたって急成長を続けることは至難の業である。1950年以降年平均5%以上の成長を20年にわたって遂げられたのは、途上国全体の4分の1以下、30年以上は途上国全体の10分の1以下、年平均5%以上の成長を40年にわたって遂げられたのはマレーシア、シンガポール、韓国、台湾、タイ、香港だけであった。

 BRICsという考えほど世界経済に対する見方を混乱させたものはない。BRICs4カ国は、それぞれの地域で最大の経済ということ以外に共通点はあまりなかった。ブラジルとロシアがエネルギーの産出国であるのに対しインドは輸入国である。中国を除き、貿易の相互の結びつきはあまりなく、2000年代のような例外的な場合を除き、この4カ国は同時に成長しそうにない。

 景気循環は、通常5年周期であり、世界経済の周期をはっきり見通せるのはせいぜい10年である。今後10年で言えることは、中国経済の更なる成長鈍化である。中国は、すでに人口の50%以上が都市に住んでおり、農村部の過剰人口が消滅するという「ルイスの転換点」に近づいている。中国経済が米国経済を近々追い越すという見方は、1980年代の日本経済に対する見方同様、杞憂であったということになるだろう。

 中国、そして先進工業国の成長が鈍化すれば、ブラジル、メキシコやロシアなど輸出に頼っている新興国は成長のため輸出以外に頼らなければならなくなるが、多くの国はうまく行かないだろう。その結果今後新興市場が2000年代のようにいっせいに成長することはないだろう。

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