2024年4月27日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2012年12月27日

図表6 米国 天然ガス価格低下による景気への影響  拡大画像表示

 EUの天然ガス平均価格とアメリカのガス平均価格との差からアメリカの天然ガス消費額を計算すると、安いシェールガスの増産でアメリカ経済はGDPが1.3%押し上げられているとみることができる(図表6)。

 図表6からは、2012年のアメリカのGDPは天然ガス価格低下で前年差0.3%押し上げられているとみることもできる。エネルギーコストの低下が全ての経済や産業に影響することを勘案すれば、アメリカでのシェールガス増産の経済成長への寄与はもっと大きくなる。

 シェールガスは世界中で利用されている天然ガスと同じものであり、20世紀半ばにエネルギー源の主力が石炭から石油に大転換したときのような新規性には乏しい。しかし、その最大の特徴は安価で大量に存在することにある。

 安価で豊富なエネルギーの発見や増産の上に経済成長や産業発展が成り立ってきたのが世界の歴史であることに鑑みると、アメリカでのシェールガス商業化は、まずアメリカ、それから世界のエネルギー事情を大きく変える可能性を強めている。

世界経済の新たな胎動に乗り遅れるな

 「失われた10年」を経験して成長が低迷してきた日本経済は、世界経済の中でも出遅れるばかりだった。しかし、通貨統合・ユーロ圏形成で生じた経済金融バブル的状況が行き詰まった欧州では、日本と同じように成長戦略が不可欠となっている。横一線となった日本にとっては、出遅れを解消するチャンスが巡ってきたといえる。

 他方、シェールガス革命はアメリカ経済の復活を下支えしつつある。環境への懸念があって開発は進んでいないが、シェールガスは欧州大陸にも豊富に存在する。安価で豊富なエネルギーを活用する国が経済成長をはたし、豊かになってきた歴史の中で、日本もシェールガス革命というミニ・エネルギー革命に乗り遅れるわけにはいかない。

 2013年の世界経済は回復しても緩やかだろう。しかし、底流にある胎動を見逃してはならない。多くの課題が日本にはあるが、将来を決める世界的な経済活力回復と増進の取り組みに遅れをとることは許されない。2013年には、新政権がスピード感を以て大胆に経済構造改革に取り組み、円高等のいわゆる六重苦を解消させることで、民間活力を増進させ、経済活力を回復させることを期待したい。


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