ベテラン経済記者の眼

2013年2月25日

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 政府は新しい日本銀行の総裁にアジア開発銀行総裁の黒田東彦氏を起用する方針を固めた。日銀の総裁人事は5年に1度の大イベントだけに、日本国内のみならず世界中の関心が高い。いきおいメディアの取材も活発になる。今回は5年前に起用が検討されたものの国会の同意が得られなかった武藤敏郎氏が総裁になるのかどうかが焦点だった。

民主党にも認められる人事

 日銀の総裁・副総裁の人事は国会同意人事であり、衆参両院の双方の同意が得られないと成立しない。昨年暮れの衆院選で自民党は大勝したため、衆議院は自民党の意向が通るが、参院は過半数に達しないため、民主党が多数を占める参院での同意を得ることがきわめて重要だ。このため安倍首相がどのような人材を起用するのかが注目されていた。

 メディアの報道ベースでは、総裁候補には武藤氏のほか、黒田氏、岩田一政・元日銀副総裁、岩田規久男・学習院大教授、伊藤隆敏・東大教授などがあがっていた。

 財務省サイドは何とか武藤氏になってもらいたいという希望をもっていた。武藤氏は財務次官と日銀副総裁を経験しており、デフレからの脱却を最優先課題とする安倍政権にとっては資質的には総裁に起用するにはふさわしい人材といえる。しかし5年前のように国会で同意されず、政治的に混乱するような事態に陥った場合、政権へのダメージは大きい。このため、同意してもらえないような人事は避け、民主党にも認められる人事という枠組みの中でベストな人材を選ぶという方向に傾いていったと思われる。

精彩を欠いた日経、読売

 メディア報道で日銀の総裁候補をめぐり黒田氏に言及したのは2月10日付の産経新聞が最初だった。トップでこそなかったが、それでも一面で「日銀総裁、黒田氏が有力」の見出しで、財務省で国際金融を取り仕切る財務官を年務めた黒田氏の起用が有力になったと報じた。その根拠として安倍首相が2日前のBSフジの番組で、新総裁の起用条件について「(財務省出身でも)国際金融をやっていて金融マフィアと交流がある人もいる」と語ったことを挙げた。

 その後、2月2日に朝日新聞が一面トップで「日銀総裁 黒田氏軸に調整」と出し、翌日24日に産経新聞が「黒田氏に打診」と報じてダメを押した形になった。一方、経済報道では絶対の自信をもっているはずの日本経済新聞や、人事取材に熱心な読売新聞などは今回は全く精彩を欠いていた。

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