2024年4月26日(金)

Wedge REPORT

2013年4月23日

松井精機の松井懐社長

 航空機、自動車レース用部品等に強く、精密切削加工技術で高い精度を誇る松井精機。中嶋さんに会うなり「お客さんから褒めてもらった」と松井懐社長。大手航空機メーカーからの仕事を高く評価してもらえたことが嬉しくてたまらない様子だ。

 松井さんもリーマンショック等で会社経営が厳しくなった。そのとき中嶋さんから「全てを守ろうとしては駄目」と声をかけられたことが印象に残っているという。中嶋さん曰く「会社の状態を直視できず、プライドが邪魔して銀行にも頭を下げることができず、問題を先送りする経営者は少なくない。でも、それが人情というもの」。

 だからこそ、中嶋さんは経営者に寄り添い、そっとアドバイスをしてあげる。松井さんには「今ならまだ全てを失わなくて済む。せっかくの技術力を残そう」というメッセージを送った。松井さんは役員報酬や資産の圧縮、従業員の削減などリストラに取り組みながら、改善に向け努力を続けている。

足で築いた金融機関との関係

 中嶋さんが中小企業金融の「一番の目利き」と評価するのが日本政策金融公庫(国民生活事業、旧・国民生活金融公庫)の板橋支店だ。「セーフティーネット機能を発揮するのが我々の役割だが、民間の金融機関が大抵メインバンクでイニシアチブを持つ。税理士さんは税務に強いが、地域特性を把握しにくいケースもある。そういう多くの関係者の間に入って、調整をしてくれているのが活性化センターです」と八筬和夫支店長は言う。

 中嶋さんが関わった民間金融機関からはこんな声が聞かれた。「積極的にお客さんに関わり、プロパー融資も増やしているが、金融機関の職員では限界もある。豊富な経験を持ち、お客さんの現場をよく熟知しているから、こちらも助けられている。金融機関の監督官庁である関東財務局の幹部を招いた勉強会を開いてくれるなど人脈もすごい」(東京信金・原武融資部長)。

 「金融機関はいろんな手立てで経営改善計画のお手伝いをするが、あくまで債権者と債務者の関係を超えられない。公的な立場を持つ中嶋センター長が間に入ってくれることでスムーズに進む」(巣鴨信金・清水俊男専務理事)。「一緒に金融機関まで行ってくれる人はなかなかいない。お客さんから見ればとても頼りになるでしょうね」(城北信金・長南諭常勤理事)。共通していたのは自ら出向くフットワークへの評価だ。1件1件の支援先を大事にして、4年間、ネットワークを地道に築いてきたことの表れだろう。


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