チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年6月13日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 北朝鮮外交に一つの転換が表れてきた。何度も繰り返されてきたことだが、攻勢から一気に妥協――あくまで姿勢だが――へと転じる外交巧者ぶりは、相変わらず健在であったということだ。

 私がそれを強く感じたのは、金正恩総書記の特使とされる崔竜海朝鮮人民軍総政治局長が5月22日から北京に派遣されてきた、そのときだ。

 一見すると中国の機嫌を取るように北朝鮮が特使を派遣してきたかのようにも受け取れるのだが、おそらく“軟化”のタイミングは米韓軍事演習が終わることに合わせたものだろう。

韓国に見せた北朝鮮の態度の変化

 6月9日から10日にかけて軍事境界線上板門店において行われた南北実務協議(局長級)では、12日と13日の2日間、ソウルで南北会談が開かれることが決まるという展開も見せた。会談では韓国側が強く求める「開城(ケソン)工業団地の稼働正常化の問題」や「金剛山(クムガンサン)観光プロジェクト」、「離散家族の面会問題」などが話し合われるとも伝えられたことで、こうした北朝鮮の態度の変化の意味を見極めようとする報道が熱を帯びた。(編集部注=その後、12~13日の南北会談については、いったん中止が決まった)

 そして、例によって「北朝鮮が追い詰められた」、「中国の金融制裁が効いた」といった解説が飛び交うこととなったのである。

 だが、本当にそうだろうか。

 もし中国の制裁に怯えたのなら、その後も短距離ミサイルを撃った――これは米韓軍事演習に対抗したとされる――のはなぜか。また中国だけでなく、対日、対韓国にも同時に軟化姿勢を見せたことの説明はどうつけられるのだろうか。また技術的意味では、もし中国の四大商業銀行の存在がそれほど大きいのなら、中国の対北朝鮮貿易をする者たちは、たちまち焦げ付きを恐れて中国製品の輸出を慌ててストップするはずだが、そうした現象も少なくとも現状では伝わってこない。それはどういうことなのか。謎は尽きない。結局、中朝関係はそれほど単純な話ではないということなのだろう。そのことは特使を迎えた中国の反応からもうかがうことができる。

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