復活のキーワード

2013年7月16日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、東京証券部、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務める。11年からフリーに。熊本学園大学招聘教授。近著に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)。

アベノミクスで追い風が吹いて、久しぶりに兜町が賑わいを見せている。しかし、取引の大半は機械による自動売買で、トレーダーは海外に去ったままだ。金融機関と投資家を呼び戻し、金持ちが日本に資産を移し、日本で消費生活を楽しむ。それでこそ、本当の意味で日本経済は再成長路線に乗る。
株の町、東京・日本橋兜町が賑わいを見せている。1年前とは打って変わり、町を歩く証券マンの表情も明るい。周囲の老舗の売り上げもうなぎ登りとか。長期にわたって株価低迷が続き、証券会社が続々廃業。兜町がワンルームマンションの町に変わりつつあったから、すんでのところで復活の兆しが見えてきたということだろう。

 町の中心である東京証券取引所も今年1月、大阪証券取引所と合併。日本取引所グループが誕生した。日本の金融市場の中心として体制を整えたところへ、アベノミクスの追い風が吹いた。ご存じ、安倍晋三首相が掲げる経済政策である。昨年末に10,395円だった日経平均株価は5月には15,000円を突破、5カ月で5割も上昇した。

 もちろん、兜町が潤っているのは、株価水準が上がったためではない。長年、株式市場から遠ざかっていた個人投資家などが一気に売買を再開、売買高が急増していることが大きい。実際、5月23日には日経平均が1100円も下がる急落に見舞われたが、この日の売買高は何と76億5500万株と過去最高を記録。売買代金で見ても5兆8377億円と2007年以来の過去最高となった。バブル真っ盛りの1987年3月の1日平均売買高が14億株で、バブル崩壊後は1億株台しか出来ないこともあったことを考えると、猛烈な活況ぶりだ。上場企業である日本取引所の株価自体、あれよあれよという間に3倍になったことを見ても、いかにアベノミクスが兜町を潤しつつあるかを示している。

 バブル期の5倍という売買高は個人投資家が戻ってきたことだけによるわけではない。売買の仕方がこの四半世紀で劇的に変わったのだ。インターネット売買の普及でデイ・トレーダーと呼ばれる投資家が急増し、株式を長期に持つのではなく、1日の間に売買するスタイルが一気に普及した。いわゆる回転売買が激しさを増すことで、売買高が大きく膨らんでいるのだ。

 さらにアルゴリズム取引と呼ばれるコンピューターによる自動売買も広がっている。株価のわずかな動きを捉えて激しく売買を繰り返すシステムである。短期的な株式売買の世界は、もはやコンピューターどうしの戦いの様相を呈している。取引所の売買システムのコンピューターとつなぐミリセカンド(1000分の1秒)の通信時間が優劣を決するようにまでなった。取引所のサーバーが置かれているデータセンター内に自社のサーバーを置くことはもとより、隣の棚に置けるかどうかまでが争われている。それがデータセンターのサービスにもなっている。

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