2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月10日

 サウジやイスラエルはイランの転向という考え自体が危険な錯覚だと思い込んでいる。しかし、制裁の強化や交渉でより厳しい条件を突きつければ、よりよい合意が得られると思うことこそ錯覚であって、今回の暫定合意に代わる選択肢は、イランの核開発放棄ではなく、米国の外交放棄であり、軍事攻撃への準備だった。

 勿論、イランとの賭けが報われるかどうか、誰にもわからない。しかし、リスクは低く、得るものは大きい、そして、それに代わる選択肢が悲惨なものであることは既にはっきりしている、と述べています。

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 対イラン交渉の暫定合意について的を射た良い論説であると思います。もちろん、先の見通しについては、この論説の結びにあるように、「このイランとの賭けが報われるかどうかは分らない」ですが、「リスクは低く、得るものは大きい」という判断は妥当でしょう。

 現状におけるオバマ政権のレーム・ダック化は客観的事実と言えますが、もし、イランとの間の交渉が成立すれば、いわゆるハト派路線が復活して、それがオバマのシリア政策の再評価にまでつながる可能性さえまだ残っています。

 Peace broke out、という表現があります。「戦争でなく平和が勃発した」ということです。1938年のミュンヘンの平和の一年後に第一次世界大戦が勃発したのと同様のことが、今回のイランでも起こる可能性はあります。しかし、暫定合意がそのまま平和につながる、Peace broke outの可能性もあり、中東情勢、ひいては世界情勢も大きな転換点にあるのかもしれません。

 そうなった場合について、先のことは分かりませんが、一つだけ気にかかることがあります。それは、湾岸の平和が現実のものとなった場合の原油価格への影響です。地域の安定化は原油価格を下げる大きな要因です。しかも、そこにイラン原油、そしてイランと親しいマリキ政権のイラクの原油も大量に入って来ます。そうなると、原油価格は大幅に低下すると思われます。

 原油価格が下がるのは、当面日本経済にとって良いことです。ただ心配なのは、米国経済に与える影響です。米国内政が、議会が予算も決められない麻痺状況なのに、米国経済が堅調なのは、一つにかかって、シェールオイル、ガスの生産見通しによります。ところが、その採算の分岐点は原油価格80ドルぐらいといいます。もし、石油逆ショックがあれば、米国経済の見通しに影が差し、日本経済も影響を受ける可能性はあると思います。

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