2024年12月7日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年1月10日

 イランとの合意は提案され得る最善のものだっただけでなく、中東を変えることになるかもしれない、とエコノミスト11月30日‐12月6日号が論じています。

 すなわち、今回の暫定合意の一番の意味は、それが開いてくれる可能性にある。イランが自制し、世界がそれに応えれば、より永続的な包括的合意の実現に向けた友好的交渉環境が生まれ、それはまた、より協力的な米=イラン関係、あるいは、少なくとも両国の反目の減少につながる可能性がある。

 湾岸諸国、イスラエル、そして米議会の一部はこれを全くの幻想と言うが、本誌(エコノミスト誌)の見方は異なる。イランと取引することは確かに賭けだが、短期的に西側が失うものはあまりない。他方、査察の受け入れにより、イランが核兵器製造に走れば、世界はすぐにそれと察知できる。また、協議が決裂しても、全く合意がなかった場合よりもイランは核兵器製造から遠のく。

 それに、イランには引き続き圧力がかかっている。イランが騙したり、協議の進展を妨害すれば、暫定合意に自らのクレディビリティを賭けたロシアや中国の面子をつぶすことになる。また、米国は、イランが核に関する約束を破った場合、軍事攻撃を行なうという選択肢を放棄していない。逆に、イランが暫定合意を守り、交渉を続ければ、得るものは大きい。今後6カ月間石油禁輸が続けば、それだけで失われる金額は300億ドルにもなる。

 イランが態度を変えれば中東全体が変わる。イランが、国外で騒乱を広げれば、いずれ自国に跳ね返ってくると判断し、周辺諸国を脅威ではなくチャンスという観点で見るようになれば、それはどんな数の軍事協定よりもイスラエルとサウジの安全に資するだろう。

 中でも、直ちに大きな影響が表れるのはシリアだ。アサド政権はイランの後ろ盾のおかげで続いてきたが、今やイランはシリアで人も金も失いつつある。他方、シリアの反政府派地域を牛耳る過激スンニ派への恐れは米国と共通する。譲歩するようアサドに強制できる者がいるとしたら、それはロウハニ大統領だ。

 また、イランがレバノンでヒズボラを手先にするのを止めれば、あるいは、イラクのシーア派への影響力を行使して和平仲介を始めれば、中東の安定は増す。単にイラク、バーレーン、パレスチナ、イエメン等で有害な行動を控えるだけでも効果はある。


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