11月20日付英フィナンシャル・タイムズ紙にて、David Gardner同紙国際問題編集員は、イラン問題等をめぐり、アラブ諸国及びイスラエルの対米不信が高まる中、ロシアがエジプトと「2+2」を行うなど間隙に付け込んでいるが、ロシアは経済力を欠いているし、米国が中東から引き上げるわけでもないので限界がある、と論評しています。
すなわち、アラブにおける米国の同盟国、そしてイスラエルにおいては、米国がもはや信頼できる相手ではないとの確信が生まれつつあり、その間隙にロシアが入り込んでいる。先週もロシアの外相と国防相はエジプトを訪問して「2+2」を行った。41年前、エジプトが2万名のソ連軍顧問を追放して以来の大転換である。
サウジ・アラビアは、米国との関係を根本的に見直すことを匂わせ、NATOの一員であるトルコは中国兵器を購入すると言い出した。
この地域の諸国は、米国に対して共通の不満を抱えているわけではない。アラブの春でこれまでの提携相手が次々に倒されて行くのを米国が看過したこと、イスラエルとサウジの働きかけにもかかわらず、イランとの戦争を避けたこと、エジプト軍部がモルシ政権を追い出すと軍事援助を部分的に停止したこと、そして現在の最大の問題はイランと和解しようとしていること等様々で、団結して米国に当たってくるわけではない。
オバマは戦争から手を引くために大統領に選ばれた。そしてイランとの戦争に引きずり込まれなかったことも、良いことである。
しかしこれらのことは、地域に力の真空を作り出している。そこにロシアは入り込んでいるわけだが、イランとアラブ、イランとイスラエルの対立を軸とする複雑な中東で、米国にとって代われるはずもない。ロシアは経済・技術力を欠いている。