2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年12月20日

 11月24日、ジュネーヴで、「P5+1」とイランの間で、イランの核開発に関する暫定合意がなされました。それを受け、11月24日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙が批判的な社説を掲げたのに対し、11月25日付ワシントン・ポスト紙は合意を支持する社説を載せました。以下に、その要旨を紹介します。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説:

 オバマ大統領は、イランの核計画が進むのを止めたとして今回の合意を歓迎しているが、現実には、イランを事実上の核大国に大きく近付けた。

 暫定合意は、全ての濃縮を止めるまでは制裁を緩和しないという国連決議の条件に合わない。イランは濃縮を続けられるし、アラクのプルトニウム炉は閉鎖されない。

 オバマの演説は合意の大きな穴を無視している。イランは新たに遠心分離機を設置出来ないと言うが、今既に1万の遠心分離機が稼働している。イランは特定レベルの濃縮を止めて在庫の危険を減らすと言うが、5%濃縮は続けるのであり、容易に20%濃縮に移行できるし、酸化された20%濃縮ウランも元に戻せる。プルトニウム炉も稼働させないだけである。北朝鮮も似たような約束をして、その後爆弾を作った。査察について、オバマは広範なものと言ったが、イランは追加議定書を批准していない。イランは査察官を北朝鮮のように追い出せる。制裁緩和についてオバマは「控え目」と言ったが、制裁強化路線は転換された。特に石油禁輸緩和は有害で、中国、インド、ドイツはイランとの取引に戻るだろう。

 これらの問題は最終合意で交渉されると言うが、この合意はイランの少しの譲歩と制裁緩和の先例になりかねない。イランは交渉の席を立つと脅し、オバマはこの外交上の成果を無にしたくないために、プロセスを実質より重要視してしまいかねない。独裁政権の方が世論を無視し得るので、有利になる。

 イランのザリフ外相は、西側はイランの核濃縮の権利を認め、軍事行動の脅威は除かれたと述べた。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、この合意を「歴史的誤り」と呼んだ。

 オバマ大統領はこの合意を推進する決意である。しかし議会は制裁を強化して、オバマ大統領の決意を阻止すべきである。イランの核開発を止めるには、それしかない。


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