2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年12月20日

ワシントン・ポスト紙の社説:

 イランの核開発に関する合意は暫定措置として価値があり、軍事行動よりずっと良い。合意は包括的解決へ向けて1年の猶予を与える。米国はこの合意の条項を長期的には受け入れるべきではない。この合意でイランが核爆弾に必要な高濃縮ウラン製造まで今の1カ月から1-2カ月余計にかかる。約70億ドル分の制裁が緩和される。

 もっとも歓迎すべき部分は、中度濃縮ウランの製造中止、その在庫の危険性除去、プルトニウム生産が可能な炉の完成停止である。国際査察の強化もある。

 しかし米国などは問題のある譲歩もした。イランは包括的解決でも濃縮能力を維持するとされている。金融制裁の緩和に加え、イラン海運への保険付与も可能になる。

 合意のリスクは大きい。暫定合意に反対したイスラエル、サウジ・アラビアなどアラブ諸国との亀裂がある。イスラエルは、制裁は一度緩和されれば崩壊すると警告してきた。こういう危惧が現実化するかは、米国がインド、中国、日本にイランからの石油輸入を制限させられるかによる。

 もっとも重要なのは包括的解決の内容である。もしイランに濃縮能力を認めるのならば、遠心分離機の数は減らされるべきだし、幾つかの重要施設は閉鎖されるべきである。水曜日にハメネイは米国とイスラエルを非難した。イランと西側がデタントに向かっているとは言えない。

 議会は、制裁によってイランを交渉の席に着かせる重要な役割を果たしたが、交渉の最中に制裁を課すのは止め、外交にチャンスを与えるべきである。

* * *

 上記2つの社説は別々の立場で書かれています。ワシントン・ポスト紙の社説の方が現実的と言えます。

 今後、議会が、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の言うように、追加制裁を課すようなことになれば、この合意に米国が違反することになってしまいます。オバマ政権としては、そういうことを許してはならないでしょう。


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