2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年3月25日

 馬英九としては本年秋の北京におけるAPECサミットに、条件が整えば参加したい、と公言している。ただし、多くの台湾の専門家たちは、これまでの5年間に両岸関係が劇的に進展したとは言え、主権をめぐる問題やその他カギとなる政治問題についての中台の立場の違いを考えれば、馬の本年秋の訪中については、その可能性はありそうもない、と考えている、と述べています。

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 張旭成は、民進党陳水扁政権下で国家安全会議副秘書長を務めた人物です。論説からは、2月11日から14日に行われた、中台間の初の閣僚級会談の背景も読み取ることが出来ます。

 中国側としては、これまで比較的容易であった台湾との経済関係強化の局面を終わらせ、政治対話、政治協議の局面に早く移行したいところです。あと2年間強の任期をもつ馬英九政権の間に、台湾との関係を後退できないところまで推し進めたいと考えているに違いありません。

 特に習近平体制になってから、これまでの中台関係の進み具合に焦りの気持ちが出てきているように見られます。台湾海峡を隔てた福建省で長く地方幹部として仕事をした習近平としては、台湾問題で何らかの成果をあげたいと考えているふしがあります。

 他方、馬政権としては、引き続き、経済関係を中心に中国との関係を強化し、政治分野については条件付きで対話に応じるという姿勢ですが、支持率の低迷状況から何とか脱却して、今後の選挙に臨みたいというところであろう。

 台湾側行政院大陸委員会主任(王郁琦)と中国側国務院台湾弁公室主任委員(張志軍)の会談については、11日に南京で行われた会談後の新聞発表に、以下のような注目すべき点が含まれています。

 1)会談内容については、新聞発表にとどめ、覚書(コミュニケ)は発出しない。

 2)今後、中台間の事務レベルでのコミュニケーションのパイプを強化する。

 3)中台間の出先連絡事務所の相互設置の方策を検討する。

 4)「92年コンセンサス」(一つの中国を原則とするが、その解釈は各々に委ねる)を両岸対話の基礎とする。

 5)馬総統のAPEC北京サミットの参加可能性については話し合われなかった。


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