2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年4月21日

 習は、3月11日の演説で、この課題のあらましについて、次のように語っている。「我々は、国防と軍の構造に制約を与えている、組織的障害、構造的矛盾、政治的問題を解決し、軍の組織の近代化を前進させなければならない」

 習は現在、軍区間、軍種間での分断に悩まされている中国軍の組織再編について言っている。昨年の新しい国家安全委員会設立の発表は、軍と保安組織の統制を再構築する第一歩であった。次の段階として、軍の新たな統合作戦指揮構造の発表があったが、これが正確には何を意味するか、詳細はまだ曖昧なままである。いかなる改革においても、既得権者を抑え込むことは、大変な戦いである。

 習がこれほど素早く、中国の軍を再構築する方向に動いたことは、特筆すべきことである。胡錦濤は、共産党総書記に就任してから中央軍事委員会主席になるまで2年を要した。ゲーツ元国防長官を含め、多くの専門家によれば、胡は中国軍を完全に掌握していなかった。対照的に、習は、軍を直ちに掌握し、1年足らずのうちに、軍の再編と近代化についての構想を発表し始めた。

 習は、軍を反汚職キャンペーンのターゲットにもしているが、汚職で有罪となった軍人への懲罰は、文民の場合よりも遥かに遅れている。汚職との戦いを含む、人民解放軍の組織構造を近代化する努力は、技術の近代化よりも困難であろう。習がどのように軍を再構築するかが、軍の意思決定のあり方と命令が遂行される速度に、長期間にわたる結果をもたらすであろう。

 中国の軍事技術の近代化が重要であることは疑いないが、陸海空軍の協力強化から軍区への統制強化にいたる、軍自体の構造改革は、アジア太平洋の安全保障環境にもっと大きな影響を持ち得る、と論じています。

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 筆者Shannon Tiezzi女史は、ハーバードで修士号を取得、清華大学への留学経験もある中国専門家で、Diplomat誌の共同編集者として、最近、同誌に中国関連の記事を精力的に書いています。Diplomat誌が売り出し中の若手の一人のようです。


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