チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年4月24日

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平野 聡 (ひらの・さとし)

東京大学大学院法学政治学研究科教授

1970年、神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業。東京大学法学部教授。アジア政治外交史担当。著書に『大新帝国と中華の混迷(興亡の世界史17)』(講談社)、サントリー学芸賞を受賞した『清帝国とチベット問題 多民族統合の成立と瓦解』(名古屋大学出版会)がある。

ある地図をめぐり、日本の発表に反論

 去る3月16日、日本の外務省が公式HP上の「尖閣諸島について」PDFファイルを更新し、1969年に中華人民共和国国家測絵総局が発行した「中華人民共和国分省地図」のうち「福建省 台湾省」を掲載し、1970年前後までの中国が依然として「尖閣」名称を用いていたことを示した。これに対する中国側の主張もまた、「釣魚島=台湾」論の繰り返しであった。

 まず翌3月17日、中国外交部スポークスマン・洪磊氏は定例記者会見(全文が中国外交部公式HPにあり)にて、次のように語った。

 「釣魚島とその附属島嶼が中国の固有の領土であることは否定出来ない事実であり、十分な歴史と法理の証拠がある。この歴史的事実は一部の人が無駄に心労を費やして一二枚の地図を探し出したところで翻すことが出来るものではない。もし必要であれば百枚でも千枚でも、釣魚島が明らかに中国に属する地図を探し出してみせよう」

 筆者が思うに、もし中国が探し出せるのであれば、探し出して頂ければ良い。しかし、なかなか見つけることは出来ないのであろうか、翌日には「釣魚島は台湾の一部分であるため、日本は台湾の一部分である釣魚島を返すべきである」という主張を繰り返した。しかも、地図には如何に「尖閣」と記してあろうとも、規定のスペースを超えて載せたこと自体が「主権」のあらわれなのだとして、次のように言う。

 「福建省・台湾省が管轄する地区を完全に示すため、この地図はとくに福建省北部・台湾省南部と釣魚島及びその近海については、通常の図幅を超えて『はみ出し』形式で描き込んだ。これこそ十分有効に、釣魚島が中国の一部分であることを証明している」

 さらに4月8日、同じく中国外交部スポークスマンである華春瑩氏は、日本が既に集めた膨大な史料をデータベース化して公表する方針であることに触れ、上記洪氏の発言を「補強」するかたちでこう語った。

 「明清の多くの地図で明確に釣魚島と記されているし、日清戦争前の西洋の地図でも広く釣魚島という名称が用いられて来た。日本がどれほど苦心して幾許かの資料を探し出し、断片的な決めつけを行って歴史を引き裂こうとしても、釣魚島が中国に属するという事実は変えられない。最近、日本は1969年の中国の地図を取り上げて大いに文章をなしたが、逆に釣魚島が中国の一部分であることが力強く証明された。日本は、資料を公表するときには注意深く慎重にするよう、目を覚まして頂きたい。小手先の拙いことをするべきではない」

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