日中関係における摩擦、あるいは賃金上昇や契約トラブルなど中国ビジネスにおける様々な問題点ゆえに、昨年は日本企業の対中投資が大幅に減って東南アジア・南アジアシフトが進んだと伝えられるなど、「日本の中国離れ」がしばしばいわれている。
しかし、日本側の都合だけでそれが順調に進むというわけではなく、むしろ中国側が彼らの利益に基づいて日本という存在にますます注目しているために、結果的に日中関係は今後も複雑なからみ合いが続くというのが実情であろうか。このような情勢の最も明確なあらわれが、所謂「爆買い」と呼ばれる現象に象徴される中国人観光客の日本旅行激増であり、昨今メディアを賑わせるアジアインフラ投資銀行(亜投行)への参加問題であろう。去る22日、アジア・アフリカ会議60周年に合わせ、インドネシアで安倍晋三首相と習近平国家主席が会談したのも、このような動きの一環であると考えられる。
(写真:新華社/アフロ)
「釣魚島=台湾」を主張し続ける中国
いっぽう、中国は表向きのソフト路線とは別に、戦後70周年にあたり依然として「反ファシズム戦争勝利」を強調し、日本を牽制し続けている。
中国は、日本がミズーリ号で降伏文書に調印した9月2日に合わせて(実施日は3日の予定とか)軍事パレードを開催するといわれる。これは、「中国人民が苦難の歴史と偉大な勝利を再確認し未来に向かう」ことで中国共産党・ナショナリズムの求心力を高めるためのものであり、日本には歴史を正視するようアピールする一方、日本を敵視するわけではなく共に未来を切り開くためであるという。
しかし、中国側が「反ファシズム戦争」を語るとき、その裏には必ず尖閣問題があることも否めない。
中国は、日本の無条件降伏によって台湾が中国に返還された以上、「台湾の一部分である釣魚島」も無条件で即座に返還されるべきであり、それに未だに従わない日本は、反ファシズム戦争たる第二次大戦の結果を認めないという点で、世界秩序に従わない存在であると主張してきた。そして、尖閣問題がニュースの論点として浮上するたびに、「釣魚島=台湾」という図式が示されてきた。