2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年9月19日

*前篇はこちらから

 日本を「中国の映し鏡」ではなく他者としてとらえるべきと気づき始めた一部の中国人のあいだでは、一歩踏み込んで日本研究・日本認識の一新を求める動きもある。

 たとえば、もともと知日派の閲覧が多いと言われるポータルサイト『騰訊(テンセント)』のオピニオンコーナー「大家」(「みんな・皆様」の意)に掲載された姜建強氏のエッセイ「君の知っている日本はこのようなものか?」(http://dajia.qq.com/blog/277148103204715) は、日本における司法の独立・学問の独立・表現の自由・権力者の面子にこだわらない現実的な政策立案・不正に対する厳格な社会的制裁・殺到する中国人観光客への「おもてなし」にもぬかりない誠実な職業精神などを列挙する(それは日本に仮託した自国批判とも読める)。そして、日本との暗い歴史も忘れるべきではないが、感情に流されずに日本の歴史と現実を研究しなければならず、「侵略者を知る必要はない」という発想こそ、両国の間に認識上のギャップを生み大問題であると主張する。

「日本は中国の期待通りには動かない」

 去る7月に発表されたこのエッセイは大反響を呼び、さっそく上海で姜氏や他の知日派「大家」執筆陣を招いた公開サロンが開催され、極めて熱い討論が展開された(http://dajia.qq.com/blog/453611123475668)。筆者(平野)のみるところ、パネラーの一人・劉檸氏の意見が光っていたので紹介したい。

 例えば、宮崎駿氏のアニメ映画『風立ちぬ』は、中国において「尊敬するアニメの神様が何故、軍国主義の象徴=零戦を賛美する映画をつくったのか」という巨大な当惑を引き起こしたという。これについて劉氏は「例えば宮崎監督の場合は飛行機というモノへの思慕が第一。日本は知れば知るほど、自分から遠ざかって行くように見える。そもそも中国人が自分の期待によって日本を捉えようとしても、日本はその通りではないし、期待通りには動かないことをふまえる必要がある」と指摘する。

 そして「中国人が日本を賛美、あるいは罵倒する際、実際には心の中で中国を語っていることに気づかなければならない。だからこそ日本を語るときに平常心を失ってしまうのだ」と喝破する。むしろ日本という他者を冷静に、多面的にとらえるべきであり、中国はこのような視線を獲得してはじめて、日本との関係における歴史的な悲劇・トラウマから脱することが出来る、と説く。


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