エネルギー問題を考える

2015年6月2日

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朝野賢司 (あさの・けんじ)

一橋大学特任講師

1974年福岡県生まれ。京都大学大学院にて地球環境学博士号を取得。産業技術総
合研究所バイオマス研究センター特別研究員を経て、2007年より電力中央研究所
社会経済研究所主任研究員。2015年4月より現職(兼任)。著書に『再生可能エネルギー政策論 買収制度の落とし穴』(エネルギーフォーラム社刊)など。

 経営危機に陥るシャープで、国内シェアトップの太陽電池事業が626億円の営業赤字となり、再建の足を引っ張っている。

 再生可能エネルギーからの発電を20年間等の長期間・優遇価格で買い取ることを保証する固定価格買取制度(FIT)。中でも太陽光発電(以下PV)の買取価格は、欧州FIT先行国の2~3倍という世界で最も高い水準だったたため、爆発的な導入が進み、費用負担の急騰が深刻化している。

(画像:iStock)

 高い買取価格の批判に対する反論として、「高い買取価格であったほうが、より国産品が使われ、国内メーカーの維持、強化につながる」という主張がされることがある。これは、FITを産業政策として位置づける考え方で、「ドイツは買取価格を安くしすぎたから、太陽電池製造が中国に席巻され、国内メーカーが破綻した」というよくある言い回しの前提にもなっている。

 確かに、FITによる国内市場の拡大が国内企業の国際競争力向上に貢献するのであれば、再エネ導入促進にともなう短期的な国民負担は将来的に回収できるかもしれない。では、FITによる国内市場の拡大が日本の太陽電池メーカーの競争力向上に貢献することができたのだろうか。

 結論から言えば、買取価格が高ければ短期的には国内メーカーの収益は改善するものの、長期的には中国勢との価格競争に敗れて低迷する。筆者は以前から本誌にて指摘してきたことだが[2]、最近、相次いでこれを裏付けるように、日本メーカーの深刻な経営不振が明確になりつつある。青島矢一・一橋大学教授と筆者による近刊[1]から、関連部分を紹介しよう。

 そもそも企業競争力には様々な要因が絡むため、FITによる市場拡大の影響だけを切り分けることは難しいが、2012年7月のFIT実施以降、2015年1月末までに2131万kWの設備が導入されていることから、この時期の日本各社の太陽電池事業の業績推移を見ることによって、その影響を間接的ではあるが把握できる。

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