今月の旅指南

2009年10月1日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

 

 「日蓮と法華の名宝」というタイトルから、仏像や信仰に関わる書写作品がほとんどなのかと思いきや、会場には、狩野元信や長谷川等伯、本阿弥光悦、俵屋宗達、尾形光琳、尾形乾山ら、近世日本美術の潮流を築いた京都の芸術家たちの華やかな作品が並ぶ。驚くことに、彼らは皆、法華信仰者だったという。ちなみに、光悦は、洛北・鷹が峰に芸術村(光悦村)を築いたことで知られるが、彼の死後、屋敷は「光悦寺」という日蓮宗の寺になっている。

 法華宗が京都で広まったのは14世紀初めのことだ。日蓮の孫弟子にあたる日像が京都で布教活動を行ったことから、商工業に携わる町衆を中心に法華信仰が広がり、「*題目の巷〔ちまた〕」といわれるまでになる。この町衆の支援を受け、法華芸術の華を咲かせたのが、前述の京都の芸術家たちだ。

松桜図襖 長谷川派(京都妙蓮寺所蔵)

尾形乾山筆 「八橋図」 重文  江戸時代(17~18世紀)  文化庁所蔵

 今回の展覧会は、日蓮の「立正安国論〔りっしょうあんこくろん〕」奏進(度重なる災難と国家の危機を憂いた日蓮が、鎌倉幕府前執権の北条時頼に献じた)750年を記念して開かれるものであり、会場には、「立正安国論」を軸に、日蓮宗京都十六本山などに伝わる宝物が一堂に並ぶ。

 京都の町衆や芸術家たちが、法華経に何を求め、どのような影響を受けたのか。作品を通して、その謎が明らかにされるにちがいない。

 
*日蓮宗で法華経の加護を祈るときに唱える「南無妙法蓮華経」。
 
 

 

 

日蓮と法華の名宝─華ひらく京都町衆文化─
京都市東山区・京都国立博物館(東海道新幹線京都駅からバス)
〈問〉075(525)2473
http://www.kyohaku.go.jp/

◆「ひととき」2009年10月号より

 

 


 

 

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