世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年8月3日

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 6月30日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙で、米シンクタンクCNAS上席研究員のロバート・カプランが、ギリシャ危機が有する地政学的な意味合いについて、注意を喚起しています。

画像:iStock

 すなわち、もし欧州とギリシャとの繋がりが緩めば、ロシアの侵略に対して脆弱性が増すことは、欧州の政治家達にも解っている。しかし、ギリシャは政治と文化の面で西側に完全に繋がれてはいない。欧州での19世紀の革命は政治的自由を求めたブルジョワの革命であったが、ギリシャの独立運動は宗教に基礎を置く民族運動というべきもので、ギリシャは正教会の故にロシアに対して感情と精神の紐帯を感じている。

 ギリシャが近代的な政党を持ったことはない。政党は反動的あるいは過激な運動を旨とするカリスマ性のある個人を中心とする家父長的な街の集団である。1980、90年代の長い期間に首相を務めたアンドレアス・パパンドレウは近代的な欧州流の社会主義者ではなく、南米型のポピュリストであった。彼はEUからの援助を効率的な政治形態を作ることに使わず、官僚組織を肥大化させ、支えきれない福祉国家を作り出した。今日のギリシャは国として組織されておらず、税金も僅かの人間しか払っていない。殆どのビジネスは家族の所有であり、能力主義は殆ど見当たらない。

 パパンドレウの時代、最大の新聞は左翼系のEthosであったが、ソ連の情報機関との関係が疑われていた。ソ連にとって他の如何なるNATO諸国よりもギリシャは活動し易かった。

 ロシアが欧州よりもギリシャ左翼政党のSyrizaと良好な関係を持ち、情報を持っていることはあり得ることである。ロシアはSyrizaがユーロ圏にとどまるために必要な困難な決定をなし得ないよう、その内部抗争を煽りつつあるかも知れない。もしギリシャがユーロ圏を離脱すれば、その国内経済に対する衝撃で破綻国家に陥り、ウクライナの弱体化と相俟って、ロシアに対する欧州の地政学的立場は深刻なまでに弱まることとなろう。

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