世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年10月20日

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 豪州のエヴァンス元外相が、9月16日付Project Syndicate掲載の論説で、豪州で首相が回転木馬のように交代する背景を解説し、ギラード、ラッド、アボットの歴代首相について論評するとともに、ターンブルの登場が豪州政治の安定に繋がることへの希望を表明しています。  

オーストラリア新首相マルコム・ターンブル(iStockより)

 すなわち、豪州では、この8年で5人目の新首相が誕生した。2007年以来、任期を全うした豪首相はいない。2013年6月には労働党のジュリア・ギラード首相が党首選でケヴィン・ラッドに敗北し、ラッドは同年の総選挙で敗北して保守連合のトニー・アボットに取って代わられ、そして、アボットは党内クーデターでマルコム・ターンブルに敗れた。  

政権に不安定化をもたらす3つの要因

 豪州で「首相の回転木馬」が起こることは、三つの面から説明できよう。第一は、世界の民主国家でますます明らかになっている「苛立ち」である。真摯な政治的討論よりも、至るところに存在するソーシャルメディアが、世論調査へのほとんど病的なのめり込みをもたらしている。  

 第二は、豪州特有のもので、3年という短い選挙周期が、選挙から離れた空気の中での政治をほぼ不可能にしている。党の規則が、現職首相を含む指導者を同僚議員が一夜にして引きずり下ろすことを可能にさせている。ただしこれは、今は労働党では変えられている。  

 第三に、各指導者の性格的気まぐれが、それぞれの劇的な台頭と劇的な没落をもたらしている。ギラードは、有能に物事を処理できる政治家であった。ラッドの支持率が低迷していると見るや容赦なく権力を奪取し、少数派内閣の延命のために、うまく無所属議員と交渉し、野党の女性嫌悪を議会で熱心に攻撃し、内外の大きな注意を引き付けることに成功した。しかし、重要な政治的課題について、大衆のムードに疎く、自党や大衆を引き付ける原則を持っていなかったようだ。  

 ギラードから党首・首相の座を奪還したラッドは、知性的に素晴らしく、2013年の選挙で労働党の負けを最小限に抑えたが、コミュニケーション不足と見られ、世界金融危機に対応するためのG20への取り組みで得た国際的な尊敬は、国内的には役に立たなかった。  

 アボットは、非常に保守的な社会的価値観を持ったキリスト教徒で、素晴らしい野党指導者ではあったが、首相の資質には欠けていた。アボットは、急速に悪化する経済に対し、調和のとれた政策ではなく、スローガンで対処しようとした。彼は極めて党派的で、同性婚やフィリップ殿下への爵位授与などの問題で大衆の感情に反した行動をとり、閣僚を疎外した。  

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