2024年4月27日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2015年11月30日

 日本の7-9月期の実質経済成長率が前期比年率で▲0.8%となり、4-6月の同▲0.7%に続いて2四半期連続のマイナス成長であった(図表1)。消費、外需とも前期比では増加となったが、4-6月期の落ち込みを取り戻すには至らなかった。また、設備投資は2四半期連続の前期比マイナスとなった。

 輸出や設備投資の伸び悩みの背景には、中国経済の減速や低調な世界経済などがある。消費回復の弱さも所得増の鈍さで説明される。一方で、緩やかながらも所得は増加しており、円安・低金利が設備投資を下支えしていることを考え合わせると、現在の日本経済は景気後退というよりは踊り場にあり、今後景気は緩やかに回復していくと見られる。

 しかし、それにしても円安、原油安、金融緩和、人手不足に伴う賃金上昇など、景気を強力に押し上げる要因が事欠かないのにマイナス成長が続くことは気がかりである。中国経済の減速や低調な世界経済にしても、別に中国経済や世界経済がマイナス成長に陥っているわけではない。

 ちなみに、日本同様通貨安、原油安と金融緩和の恩恵を享受しているユーロ圏経済の7-9月期GDPは1.2%(前期比年率)のプラス成長である。しかも、ギリシャ債務危機など厳しい財政金融環境があるにもかかわらず、プラス成長が2年半連続している。

 経済環境は悪くないのにマイナス成長が続く日本経済は、主要先進国経済共通の長期停滞の帰結が日本に一層色濃く表れていると感じさせる。アベノミクスで経済構造改革に踏み込んでいるとは言え、一層抜本的な改革なしには事態は打開できないようにすら見える。

良好な経済環境を生かし切れない日本経済

 日本経済を取り巻く良好な経済環境と成長率のちぐはぐさを示す一つは、円安などで企業業績が絶好調(図表2)でありながら賃金上昇が乏しいことである。相対的に低賃金の非正規雇用者がもっぱら増加していることが平均賃金上昇の鈍さにつながっていることはあるが、それでも賃金はもっと上がってしかるべきである。


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