坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2016年8月8日

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坂本幸雄 (さかもと・ゆきお)

サイノキングテクノロジーCEO、元エルピーダメモリ社長

日本体育大学卒業後、日本テキサス・インスツルメンツに入社し、93年副社長。神戸製鋼所、日本ファウンドリー社長を経て、02年エルピーダメモリ社長。現在サイノキングテクノロジーCEO。

 東芝の決算を巡る問題が世間を騒がせた。大塚家具やロッテも「お家騒動」を起こしたが、こうしたCEOの資質を疑うようなニュースを耳にする度、「日本企業はCEOの選び方がおかしい」と感じている。多くの日本企業では現CEOが後継者を選ぶか、オーナーが選ぶかの二者択一だ。こうして選ばれたCEOは従来の方針を引き継ぐことが多い。CEOの交代は、本来社員にとってエキサイティングなことで、「どのように会社を変革してくれるのか」という期待に満ち溢れるはずだ。

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 私がテキサス・インスツルメンツ(TI)に勤めていたとき、CEOが出張中に心臓麻痺で亡くなるという事態が発生した。その後、副社長が次期CEOになると聞かされ、プレス発表の準備が進められたが、発表当日に出社すると、リリースを中止するという。社外取締役の1人が「副社長ではTIは変わらない」と反対したからだ。

 当時TIには社内取締役が2人いたが、彼らは次期CEO選任会議に参加せず、社外取締役だけで、1週間ヒューストンのホテルで缶詰めになり、侃々諤々議論した。そこで検討されたのは、①社外人材の登用、②副社長の昇進、③社内人材の発掘の3案。社外人材はすぐには見付からない、副社長ではTIは変わらないという理由で、当時半導体部門のトップになったばかりの取締役でもない40代前半の人物に白羽の矢が立った。取締役会議長が幹部社員に選任理由の説明を行い、社内は「これから TIは大きく変わるのではないか」という期待感で満ち溢れていた。

 新CEOは就任後、事業領域を半導体のアナログとDSPに特化し、それ以外の部門は売却した。アナログ企業を70億ドルもの巨額で買収したが、今ではTIはアナログで世界一となっている。

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 社内の人間がCEOを選ぶと、様々なしがらみが出てくる。候補者を数人選び、社外取締役に対して、候補者のレポートを送り判断してもらう、ということをすべきだ。エルピーダメモリのCEO時代は、次期CEO候補者4~5人について、社外取締役へ半年ごとにレポートし、いずれ選んでもらうかたちをとっていた。評価項目は、「インテグリティ(誠実、高潔性)」を筆頭に、「リスクテイク力」「利益創出力」「技術マネジメント刷新力」「目標達成力」「判断力」「権限委譲と責任能力」「知的洞察力と理想像」「強い生命力と持続性」の計9項目。

 大前提として経営に精通した社外取締役を選任しておく必要がある。日本では元検事や大学教授などが目立つ。CEOも社外取締役もまともな人選をしないと、グローバル競争に勝ち抜くことは難しい。冒頭の東芝に話を戻すと、社長選任には、OBの西室泰三氏が影響力をもっていたという報道もある。委員会設置会社、社外取締役の先駆的企業と持ち上げられていたが、その本質がわかっているようには思えない。もちろん東芝に限った話ではない。

  
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